出版社内容情報
天国へ行きたくて死んだと思いこもうとした男,すっとんきょうでこっけいな人シュレミール等,ユダヤ民話の登場人物がくりひろげるおかしい話や恐い話をノーベル文学賞作家が語ります.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マリリン
43
大人になる機会を持てなかった大勢の子供たちにこの本を捧げる... まえがきに、著者がイディシ語で執筆し続けた思いに、胸が熱くなる。訳者あとがきに感服する。読了後購入した本作は、哀しみや可笑しみも含む言語の神秘性と共に、ロシア文学の香りやプロイスラ―の「クラバード」を想わせるが、これが言語の力なのかと唸らせるユダヤの血を感じる民話集。特に印象に残ったのはやぎと少年の深い絆を感じた「やぎのズラテー」。「もつれた足とまぬけな花婿」や「つくりものの天国」も。ノーベル賞作家シンガーの作品は初読が約4年前で4作目。2023/12/21
ちえ
37
作者はポーランドで生まれ移民として米国に渡ったイディッシュ語作家。後にノーベル賞を受賞、受賞理由は「ポーランド·ユダヤ文化の伝統に根ざし、生命に普遍的な人間の条件をもたらす情熱的な文芸作品に対して」渡米には反ユダヤ主義から逃れる目的もあった。巻頭の「大人になる機会を持てなかった大勢の子供たちにこの本を捧げます」という言葉に母国に残った人達への思いが滲み出る様だ。ユダヤの昔話を基にしたお話はクスッとするものが多いが、書名に繋がる最後の話は人と共に生活する動物への思いが伝わってくる。センダックの絵も魅力的。2019/12/14
Annabelle K
3
今は亡き言語、イディシ語で書かれたノーベル文学賞受賞者のシンガーによる児童文学。翻訳によって魅力が半減している感じがしたが、ユダヤ人の神聖感や祭典の様子(特にヤギと人の結びつきと悪魔の概念)、を知ることができた。 「宝石のような雪を踏み荒らさず、気持ちの全て、愛の全てを打ち明ける」2022/04/09
菱沼
3
ずいぶん前に読んだはずの再読。1993年に、この岩波世界児童文学集が出たときだったか。『よろこびの日』は、そのあとに読んだ。「初代のシュレミール」は、狂言「附子」に似て、どこの国でも人々は同じようなことをし、同じようなことを面白がるものかもしれないと思う。グリムやイタリアルネッサンス巷談集の中にも、落語に通じる話がある。悪魔におかみさんがいて、金輪に乗って走りまわるということを初めて知った。2021/04/25
ニワトリママ
1
久しぶりに再読。ここでもヘルムの長老たちはどんな難題にもみごとな答えを出していた。「やぎのズラテー」が秀逸。この本のタイトルもこの作品から採ったのだろう。2024/08/06