内容説明
権力に親をうばわれた少年と、妻をうばわれた男。夢にむかって、二人でゴールを決めることはできるのか。
著者等紹介
イェルチン,ユージン[イェルチン,ユージン] [Yelchin,Eugene]
1956年生まれ。ソ連のレニングラード(現サンクトペテルブルク)で育つ。レニングラード大学で舞台芸術を学んだあと、舞台美術家として活動するが、1983年アメリカに移住。現在、ロサンゼルスを拠点とするロシア系ユダヤ人画家として活動。2010年には、ユダヤ民話の絵本『Breslovのオンドリ王子』(未邦訳)で、全米ユダヤ図書賞を受賞。初の児童文学作品となる『スターリンの鼻が落っこちた』(岩波書店)は、2012年のニューベリー賞オナーブックに選ばれた
若林千鶴[ワカバヤシチズル]
1954年大阪市生まれ。大阪教育大学大学院修了。31年間、公立中学校で、国語科と図書館を担当。集団読書や「楽しく読んで考える読書」を中心に指導と実践し2012年退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かもめ通信
16
『スターリンの鼻が落っこちた』と同じ作者&訳者ということで手に取ってみた本。確かに読み応えのある話ではあるのだけれど、“人民の敵”とレッテルを貼られた人たちがどんな運命をたどったのか“知っている”だけに、作者の意図はさておき、私自身はラストに希望が持てなかった。2018/03/06
はる
8
図書館本。「チャイルド44」「グラーグ57」はおとなの本棚に、この本は子どもの本棚にある。どちらかといえば、この「アルカーディのゴール」のほうがしみじみと怖い。ふんだんにある挿絵の木馬を揺するガリガリのアルカーディ、離せないおくるみ。たくさんの奪われてしまったもの…。「新しい夢の国」は誰のための夢の国なのだろう。(イヴァンのいでたちと風貌がマスター・キートンに似ていたのがちょっと救いだった)これはもう一作読まなければ!2017/10/07
アイアイ
6
スターリン主義、なんの罪もない何万人もの人が逮捕され国外追放の後に処刑された。悪質な孤児院で欠片程の臭いパンを賭けてルール無用のサッカーをしていたアルカーディはイヴァンというコーチに引き取られ、初めて人間らしい自由な生活を得る。12歳になれば処刑の対象、イヴァンは赤軍のサッカーチームに入りたいアルカーディの才能を理解しつつ彼を保護する。理不尽の嵐!イヴァンの過去と正体。1945年赤軍サッカーチームの集合写真に著者ユージンの父であり当時キャプテンのアルカーディ・イェルチンが写っている。▽図書館2015/04/23
ぽけっとももんが
2
お互いが監視しあう殺伐としたソ連時代。「人民の敵」とレッテルを貼られてしまったら、もうどうしようもない。子どもは両親から引き離され、劣悪な孤児院に収容される。サッカーのうまいアルカーディは、妻を亡くしたイヴァンに引き取られる。なぜイヴァンがアルカーディを引き取ったのかはよくわからない、彼はサッカーが好きでもないのに。でも、寂しい二人が次第に心を通わせるのが、精緻なイラストからも垣間見えて、ほっとする。2015/04/08
shoko.m
1
親が〈人民の敵〉だといわれた子どもたちは孤児院に送られる。孤児院を転々とし、これまでで最低な孤児院の中にサッカーが得意なアルカーディがいた。看守によると明日の査察のなかに混じってサッカーのうまい子を探しているコーチがいるらしいというのだが……。旧ソ連のスターリン政権下、無実の罪で迫害された人々とその子どもたちの苦しみ、そして再生が描かれている。一見とっつきにくそうだが、読み出すとぐいぐいひきこまれる。アルカーディとコーチの関係の変化がうれしい。2015/03/14