内容説明
川べの家にひとりで暮らしている老人から、奇妙な仕事をたのまれた少女ベットは、不思議なモグラと知り合う。
著者等紹介
ピアス,フィリパ[ピアス,フィリパ][Pearce,Philippa]
1920年生まれ。イギリスの作家。ケンブリッジ大学を卒業後、BBC(英国放送協会)や出版社で働くかたわら、執筆を始める。『ハヤ号セイ川をいく』で作家としてデビュー。『トムは真夜中の庭で』でカーネギー賞を受賞
猪熊葉子[イノクマヨウコ]
児童文学者・翻訳家。聖心女子大学名誉教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
71
川辺に住むちいさなモグラは、思いがけずも人間界の王位継承騒動に巻き込まれ、魔法をかけられてしまったモグラだった。ダーウィンの進化論を理解し、テニスンの詩を愛するモグラ紳士。でも、モグラの願いは、ただひとつ。モグラは、少女の悩みに耳を傾け、適切な助言をしてくれた。少女は、モグラの思いに共感し、モグラを助けることができるのか。このような突飛な想定もイギリスならではの、ほのぼのファンタジー。2019/12/18
新地学@児童書病発動中
71
『トムは真夜中の庭で』の大ファンなのでこれも読んでみた。母親と離れて住む少女と300年生きているモグラの友情の物語。このモグラはしゃべることができるし、人間の本も理解できる。モグラが住んでいる地底の中はイギリスの歴史が埋もれている影の世界であり、魔法が息づいているのかも。誠を尽くすことの大切さというお伽噺の伝統がこの物語の中にも流れており、少女はモグラとの約束をきちんと守る。誠を尽くすとは古臭いことなのかもしれない。(続く)2013/06/05
ケロリーヌ@ベルばら同盟
46
【生誕100年ピアスを読む】一人暮らしの御老人の家でお手伝いをしているアラム夫人の孫娘、ベットは、怪我をしたフランクリンさんに頼まれて、川辺で本を朗読しました。そこに現れたのは、黒い艶やかな毛皮、掌ほどの体長、威厳ある物腰で正に紳士といった風情の、人語を解し博識でテニソンの詩を愛するモグラでした!たかだか五年程しか生きられない筈の小さな生き物に与えられた300歳を超える命と深い知恵。大人には理解できないその秘密『魔法』は、果たして恩恵でしょうか、呪われた悪しきものでしょうか。ベットは幼い胸を痛めます。2019/05/05
じょうこ
14
タイトルと表紙で『たのしい川べ』へのオマージュかな?と選んだ1冊。全くもって違った。宮崎アニメを彷彿とさせる少女の成長物語だった。相手役は手のひらにのるほどの小さな紳士。魔法をかけられて300年以上生きている。なんと、スコットランドからロンドンの先をめざし、地下を旅してる。『まぼろしの小さい犬』より本作のほうがファンタジックで、少女が紳士と育む友情がうれしくも切ない。いいセリフが多いし、地下世界、大洪水、歌など、ダイナミックな場面も多く、良質なアニメを視ているよう。ピアス84歳の作品。めっけもんの1冊。2021/12/31
芽
13
ピアスの生前最後の著作。老人と子ども、そしてモグラの、ゆるやかな距離感の触れ合いが面白い。動物物語であり、歴史物語であり、成長物語でもあるだろう。特殊なモグラは過去そのもの、あらゆる記憶の象徴であり、ピアスの過去へのまなざしを改めて知る。主人公の少女の葛藤も、真の友情の前では、凛と背筋を伸ばす。大切な存在と出会い、子どもはこんなにも豊かな精神的経験を積むのだ。世代も、種をも超えうる想いが、この世界にはたしかにある。生きてゆくもの、死んでゆくもの。土に生きる者が守る大地で、生き物はみな、短い命の火を燃やす。2016/11/05
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