内容説明
ついに故郷の島へ帰りついたが、なつかしい妻の待つ館では、求婚者たちが宴会に明け暮れていた―。オデュッセウスは息子テーレマコスや忠実な召使いたちとともに、復讐の戦いをしかける。物語仕立ての再話で楽しむギリシアの古典。中学以上。
著者等紹介
ピカード,バーバラ・レオニ[ピカード,バーバラレオニ] [Picard,Barbara Leonie]
1917‐2011。イギリスの児童文学作家。サリー州リッチモンド生まれ。バークシャー州の聖キャサリン校で学び、図書館司書として働く。その間、独学でギリシア語を学ぶ。1949年にデビュー作短編集『人魚のおくりもの』が出版される。歴史フィクション、神話や伝説の再話などでとくによく知られており、数ある執筆作のうち、3作はカーネギー賞候補となった
高杉一郎[タカスギイチロウ]
1908‐2008。静岡県生まれ。東京文理科大学英文科卒業。和光大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェルナーの日記
276
本書で興味深いのは巻末の訳者のあとがきにおける『オデュッセイア』の紹介は一読の価値がある。ところでトロイア戦争後のヘレネーには諸説あって再びスパルタの王妃として平穏に暮らした(本書ではこちらを採用)説とアガメムノーンの息子オレステースによって殺されたとする説。ちなみに夫メネラーオスはヘレネーを連れてスパルタへの帰途につくも、神への供物を怠ったため怒りを買い途中で暴風に襲われエジプトに漂流し8年かけて祖国へ帰還する。またその後、メネラーオスはヘレネーとともに不死の身となりエーリュシオンで暮らした説等。2019/05/24
buchipanda3
104
上巻は神話的な不思議な出来事が幾つも盛り込まれた漂流冒険譚。こちらの下巻は、とうとう故郷イタケー島(ギリシャ西部)に帰ってきたオデュッセウス王とその家族(妻と息子)の物語という感じで、それまでの苦難から一気に巻き返すような展開を最後まで楽しめた。家族にも正体を隠しながら悪漢らを退治しようとする演出がなかなか読ませる。何も知らない妻との会話の場面が印象的。読後は多彩な登場人物たちを思い出す。王女ナウシカアも良かった。色々と物語の原点が詰まっていた作品。さらに雰囲気を味わうために原作の叙事詩の方も読みたい。2021/06/21
SOHSA
35
《図書館本》つい物語に引き込まれ、時間を忘れて一気読みしてしまった。下巻はオデュッセウスが自国に帰り着き、自らの屋敷に屯する悪党共を退治する場面がメインであるが、その描写のみずみずしさと躍動感に魅せられ、ページを捲る手を止めることができなかった。イーリアスが最初の歴史小説だとすれば、オデュッセイアはまさに最初のファンタジー小説だろう。紀元前の古代にどのような形であれこれほどの壮大なファンタジーが生まれたことは私にとって想像以上の驚きだった。2018/08/18
なま
13
★5 ポセイドンの呪いで故郷へなかなか戻れないオデュッセウス。堅忍不抜のオデュッセウス。もう、これでもか!これでもか!という試練に発狂しそう。帰郷しても息子に父と名乗れない状況、妻への求婚者達への復讐、弓競技での常人とは思えないオデュッセウスの技能に、思わず笑みまでこぼれてしまうほど面白かった。2021/05/03
のれん
13
ギリシアというと悲劇だし、良くても妻との再会で話が終わると思ってたので、意外や意外。というか古典作品で展開に驚くとは思いもしなかった。 トリックというほどでもないけれど、貶めた卑劣漢に奸計を持って爽快な復讐を決めるのは、大衆文学の祖先と言われる所以を知った。 何かと神の怒りを買っていたにも関わらず、最後まで協力してくれる神々がいたり、許しを得て民衆に祝福されたりするなど、展開に暗喩を感じたくなるのも分かる気がする。 ただこの作品そのものはひたすらに清涼な冒険譚。行って帰ってくる。それだけの物語が一番面白い2019/06/17