内容説明
北ブリテンの辺境守備隊に左遷されたローマ軍の若き指揮官アレクシオス。衰退の一途をたどる帝国の辺境で、挫折と挑戦、出会いと別れを経て、やがて“辺境のオオカミ”として生きる決意を固める。ローマン・ブリテン四部作の最終編。中学生以上。
著者等紹介
サトクリフ,ローズマリ[サトクリフ,ローズマリ][Sutcliff,Rosemary]
1920‐92。イギリスの児童文学作家・小説家。2歳の時の病気がもとで歩行困難になり、のちに車いすでの生活を余儀なくされる。14歳で美術学校に入り細密画を学ぶが、1950年ごろから小説を発表する。ローマン・ブリテン三部作『第九軍団のワシ』『銀の枝』『ともしびをかかげて』(1959年カーネギー賞受賞)で、歴史小説家としての地位を確立した(のちに四作めとなる『辺境のオオカミ』を発表)
猪熊葉子[イノクマヨウコ]
児童文学者・翻訳家。聖心女子大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェルナーの日記
262
本作は前作にから150年くらい遡った時代の物語になっている。本作に登場する”コンスタンス1世”は”コンスタンティヌス1世”(本シリーズの2巻『銀の枝』に登場する)の三男で、父の”コンスタンティヌス1世”亡き後、長男の”コンスタンティヌス2世”と次男の”コンスタンティウス2世”、そして”コンスタンス1世”によって西ローマ帝国を割譲統治する。主にイタリア本土、パンノニア、ダキア、北アフリカなどを統治していた。 2017/04/09
さつき
62
ローマン・ブリテン4部作のうち、こちらだけ未読でした。年始に読んだ本に触発されやっと読みましたが良かったです。主人公のアレクシオスは前作から連なるイルカの紋章の一族。重大な失敗により北ブリテンの国境守備隊に飛ばされてしまう。習俗の違う氏族達で構成される隊をまとめる事は一筋縄ではいかないが誠実に取り組む主人公を応援したくなります。過去の失敗の記憶冷めやらぬうちに、再び同じ選択を迫られた時、人はどうするか?絶対絶命の危機の中重大な決断を一人でしなければいけないとしたら?何度も自問自答しました。2024/01/10
たつや
55
ローマンブリテンの最終巻ですが、読者から早く訳せと急かされたエピソードが面白く、時間差で出版された意味がわかりました。辺境に左遷されたアレクシオスが辺境のオオカミとして生きていく、挫折や屈辱と戦う男の葛藤を描いたシリアスな作品。大作の最終巻にある意味相応しい?2017/03/06
星落秋風五丈原
33
アレクシオスは彼等を辺境のオオカミに育てる事を選択。ヒラリオンも彼に従うと表明する。アレクシオスは「郷に入っては郷に従え」のタイプ なので、仲間達とはぎくしゃくしつつも、最終的にはうまくやって いける資質を持っているだろうことは最初から窺える。何せ、 「郷に入っては郷に従え」の英語訳は「When in Rome,do as the Romans do.」 なのだから。その諺を逆にすれば、アレクシオスの生き方になる。 2002/03/27
Hammer.w
26
読み終えた今日が終戦記念日の前日。戦争のために起きた問題が、この本には細かく描かれている。指令官は、群れの習慣を常に片隅におき、調子に乗ってはならない。ぞっとする記憶のかけらは最後まで残り続ける。アレクシオスが選択した辺境のオオカミという生き方を読んでもらいです。2020/08/14