内容説明
山中にたてこもるブリテンの王子アンブロシウスのもとに集い、来るべき闘いにそなえるアクイラたち。勢いを増す「海のオオカミ」ことサクソン軍との死闘の末、アクイラはなにを手に入れたのか。ローマン・ブリテン四部作の三作め。中学生以上。
著者等紹介
サトクリフ,ローズマリ[サトクリフ,ローズマリ][Sutcliff,Rosemary]
1920‐92。イギリスの児童文学作家・小説家。2歳の時の病気がもとで歩行困難になり、のちに車いすでの生活を余儀なくされる。14歳で美術学校に入り細密画を学ぶが、1950年ごろから小説を発表する。ローマン・ブリテン三部作『第九軍団のワシ』『銀の枝』『ともしびをかかげて』(1959年カーネギー賞受賞)で、歴史小説家としての地位を確立した(のちに四作めとなる『辺境のオオカミ』を発表)
猪熊葉子[イノクマヨウコ]
児童文学者・翻訳家。聖心女子大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェルナーの日記
139
物語に登場するサクソン人は、北ドイツ低地で形成されたゲルマン系の部族で現在のイングランド人の民族形成の基盤となった民族で、いわゆるアングロ・サクソン人のルーツとなる。409年にローマ帝国がブリタンニアを放棄した後、かの地は混乱を極め群雄割拠の混沌とした世界となる。そこへ侵入してきたのがサクソン人だった。さらにユトラント半島北部やヴェーゼル川河口の地域を主とするジュート人、同じくユトランド半島南部のアンゲルン半島を主とするアングル人も加わりアングロ・サクソン人(3民族ともゲルマン系民族)を形成する。2017/03/28
NAO
75
ようやく、ローマ人たちと合流できたアクイラ。そして、アクイラは、異民族の妻と政略結婚をしたことで、サクソン人のもとに残った妹の苦悩を理解できるようになる。ローマ人だが多民族の地も流れているという複雑な環境において、自分は何を為すべきか。いかに自分らしく生きるか。もはや少数でしかなく、どこからも助けはこないという厳しい状況下でも、何とかして自分たちらしく生き抜こうと、ともしびをかかげて、戦い続ける。そうやって彼らが戦い続けたということこそが、彼らが存在した意義なのだ。2019/03/21
たつや
53
本国イギリスでは教科書に僅か数ページしか載っていない物語を調べあげ、この大長編に仕上げたサトクリフの力量を感じました。それを国と時を経て、いまこの日本で読んでいる不思議、まるでタイムマシンに乗った気分。本当はこの下巻で一旦終わったはずですが、最終巻に続く。2017/03/06
ゆうゆうpanda
29
家族を殺され、妹をサクソン人にさらわれたアクイラ。奴隷として囚われた彼の生への執着は妹の安否だった。それは次第に妹の死を確かめる望みへと変わっていく。しかし、妹は生きていた。しかもサクソンの妻となり、母となって。アクイラはそれを喜ぶどころか彼女を憎んだ。私には彼の心は理解し難かった。何故褒めてあげられないのかと。物語は長い時間を掛けて妹への理解と家族の再生を描いて行く。英雄の戦いの話では決してないのだ。女性が紡ぐ女性の生き方と母性の話だと私は捉えた。上橋の物語の源流であるという解説に深く頷くことができた。2015/07/04
おゆ
26
ずっと喉に引っ掛かっていた小さな固い塊がすっと溶け落ちていく感覚。思えばこれはアクイラとブリテンが生死に関わる大きな喪失に直面し、それを回復するまでの物語なのだった。ネスとの和解にフラビア、フラビアンとの和解にマルがそれと知らず関わり、凝り固まったアクイラの心を解していく。と同時にローマ軍の庇護を失ったブリテンはサクソンの脅威に対抗するため、一つの旗の下に諸部族の力を結集する。サトクリフ作品に言われる人生と歴史の巧妙なリンクが前二作よりずっと顕著、なんて緻密で地道で鮮やかな。鳥の声と花の香りが記憶に残る。2019/08/19
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