内容説明
見習い騎士ティウリの負った任務は、二つの国の未来を左右する重大なものだった。執念深いスパイやなぞの騎士たちに命をねらわれながら、苦難の末に隣国の王のもとへたどり着いた少年の旅を、テンポよく描く。手に汗握る冒険小説。
著者等紹介
ドラフト,トンケ[ドラフト,トンケ][Dragt,Tonke]
オランダの作家。1930年、当時オランダの植民地だったインドネシアのジャカルタに生まれた。第2次世界大戦中、1942年から3年間、家族とともに日本軍の収容所で過ごす。戦後、1946年に家族とともにオランダへ帰国。ハーグの造形美術アカデミーで学び、教師になる。1961年に第1作を出版し、成功をおさめる。1976年には「青少年文学のための国家賞」を受賞。2004年秋に、『王への手紙』は、オランダで過去50年間に出された子どもの本の中から第1位に選ばれ、改めて注目を浴びている
西村由美[ニシムラユミ]
東京外国語大学英米語学科卒業。1984~86年、オランダに在住。帰国後は、外務省研修所などでオランダ語を教えながら、オランダ語作品の翻訳に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Willie the Wildcat
69
剣や盾ではなく、言動で示した騎士の精神。国や人種を超えた様々な”心”を拓く力ともなった気がする。帰路遭遇したアンドマル騎士が口にした「新しい花」に主人公の運命も重ね、哀しみの中で見出す光という感。一方、一捻りも二捻りも期待し裏切られる自分に、改めて大人げなさを感じる。例えば「ピアックが実はスルーポルだった」とか考えて、勝手にワクワク。ラヴィニアのことも含めてHappily ever after!なお、『訳者あとがき』で知る著者のインドネシアでの収容所経験。踏まえての「平和の印」も印象的。2020/03/28
帽子を編みます
64
上巻から続く冒険は、ティウリの騎士らしい振る舞いが共感を呼び味方を増やしながら進んで行きます。向かう王国の成り立ち、渦巻く陰謀の話。関わる人々も短いながら印象深く描かれます。ティウリとピアックが謎の文章を忘れないようにメロディーを付けて覚えるやり方、謎の暗殺者との対決、ついに王への手紙を渡し使命を達成します。揺れる王国、強い指導者の姿。ティウリは愛馬と剣を手に帰国の途に付きます。友との別れ、自国の王へ手紙を届けました。ティウリは自らの行いによって自らを騎士にしました。そして、親友ピアックとも再会します。2021/08/02
たつや
61
オランダで過去50年で一位になったそうですが、ハードル上げすぎて大丈夫?なんて思っていたら、手放しで面白かったので、他人におすすめできる面白さでした。武士道と騎士道が、また微妙に違うのが良い。王の対応も気持ちよく、本当にジブリでこういうのを映画にしてほしい。2017/05/02
NAO
46
騎士叙任式の前夜、最終試験を途中棄権してしまった少年は、騎士になる機会を棒に振ってまでとった勇敢な行為によって、試験よりはるかに厳しい試練を乗り越え、素晴らしい騎士に成長して自国に戻ってくる。この物語は、オランダでは常に上位にランクされる児童書だということ。イギリスには「アーサー王と円卓の騎士」の物語、フランスには「ロランの歌」、ドイツには「ニーベルンゲンの歌」と、ヨーロッパには伝説的な中世騎士物語がいくつもあるが、作者は、オランダにもそういった騎士物語に負けないような話を、と思ったのだろうか。2015/11/17
みつばちい
30
読むのは2度目だけど、細部を忘れていたのでまた楽しめた。一度目読んだ時はとにかくティウリとピアックの友情に心揺さぶられたが、今回は王の道化師の存在に惹かれた。王への手紙を届ける使命を果たした後、なかなかその内容を知ることができず意欲を失うティウリへ、虹の麓を探した者の話をする道化師。たもとには何もなかったけど、そこに辿り着くまでの過程に様々な成長や出会いがあったこと。それを気づかせるくだりがよかった。2022/12/24