感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モルク
107
リヒター三部作の最終話。17才で志願し敗戦を迎える20才まで描く。今回は小さなエピソードの塊という感じで、極限状態の中、疑問を持つことも許されずそうせざるを得なかった状況を物語る。権力者に異議を唱えられず、それを正しいこととして信じるというのは当時のドイツに限ったことではない。大本営発表を信じ、反対者はアカ、非国民と弾劾した日本も同様だった。リヒターはこれを最後に筆を折っているそうな。すべての思いを吐き出したのだろう。彼の重い思いを受け止めなければならない。2021/10/18
たつや
55
戦争三部作と呼んでいいのか?フリードリヒから完結編までを読むと作品の色合いに変化がある。あとがきにあるように、本来は各章に分かれてないそうだ。そこに作者の思いが詰まる。私もそうですが、戦争を知らない世代に読み継いで行くべき作品かと思います。2017/01/23
みつ
37
三部作の完結編。ただ前二作の内容を引き継ぐという要素は少なく、第二次世界大戦を描いたシリーズというくらいの意味合いか。入隊した時主人公は17歳。ナチス・ドイツの優勢で始まった戦争は転換期を迎え、連合軍の反撃を多方面で迎えうつ頃にはいっている。冒頭の「戦争を好むのは、戦争を知らないものだけだ」というエラスムスの言葉が示すように英雄譚はどこにも見当たらず、片腕を失ってなお先の見通せない戦場に居続ける八方塞がりの世界が淡々と描かれる。最後の「平和が来た!」の歓喜の声を少尉の主人公はどのような心持ちで聞いたのか。2024/02/03
たぬ
28
☆3.5 三部作最終。第二次大戦中でドイツ人青年が主人公だけどナチス関連への言及はほぼ皆無。尊敬を集めたい、肩書がほしい、みんな将校を目指しているから…そんな理由で志願しているように感じた。10代後半の男の子なんて自分が殺されるとは考えてもいないだろうね。隠れた穴の頭上を戦車を通す訓練で片腕がつぶされる描写は中学生にはきついんじゃないかしら…。本当に良い戦争も悪い平和もない。2020/10/20
はやしま
28
三部作の完結編。前二冊以上に淡々と出来事が綴られている。二十歳までに戦争に進む国家ーユダヤ人迫害、ヒトラーユーゲント、軍隊ーを経験する人生。偶々その時代に生まれたばかりに。本書の内容は一抹のユーモアもあるがほぼ軍隊生活の悲惨さ。でも軍隊で見たこと、したことは「正当なことだと思っていた。なぜなら、はっきりと異議を唱える者は一人もいなかったから。」という。その意図は巻き込まれた者の言い訳ではなく責任を自覚したもの。三部作を書き残してくれた作者に感謝し、その意思をきちんと受け止めたい。2016/01/22