内容説明
洋が小学3年生の年、突然おとうちゃんがたおれた。そして、戦争がはじまった。軍国主義の波にもまれながらも、ほのかな恋心にめざめる少年の成長を、元やくざの佐脇さんが見守る。大阪弁にのせて、人間の真実にせまる作者の代表作。小学5・6年以上。
著者等紹介
今江祥智[イマエヨシトモ]
1932~。大阪市生まれ。同志社大学文学部英文科卒業。中学教師、児童図書の編集者をしながら執筆をはじめる。童話や小説から、翻訳や評論まで幅広く活躍する。自らの体験にもとづいて書いた『ぼんぼん』で日本児童文学者協会賞、つづく『兄貴』で野間児童文芸賞、さらに『おれたちのおふくろ』『牧歌』へとつづけ「ぼんぼん四部作」で路傍の石文学賞を受賞。そのほか小学館児童出版文化賞、エクソンモービル児童文化賞などを受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たつや
46
関西風「坊っちゃん」かと思ったら、全然違い、反戦作品でした。少し、野坂昭如さんを思い出します。小松洋小3~小6までに体験した戦争は辛いものだった。関西弁もテンポ良いが、細かく各章に分けられた構成も分厚いわりに読みやすく、胸に迫る瞬間もあった。2017/01/13
にゃおこ
30
裕福な家で大切に育てられているぼんぼん。何針か縫合するような頭部外傷を負ったものの、回復を待つ様子だった父親が急変、他界したり、戦時下に、突入。不動のものと思われた日常も人も動き、くずれ、失うことも。戦前から終戦までを少年目線で描く児童書。2024/01/02
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
17
第2次世界大戦前後の大阪。昭和16年小3の洋が主人公。父の死、長兄の徴兵、軍国主義に傾いていく次兄。お母さんとの3人暮らしに加わる佐脇さんという老人とのかかわりが、洋を客観的にものごとを見る目をもつ人間に成長させます。少しずつ戦争に巻き込まれていくも、大阪の商人街がもつ温かさを感じました。絶対に変わらないと思っていたものが、変わっていく体験を、洋を通じて知ることができます。2020/01/12
スイ
16
父の死、戦争と激しく揺れ動く兄弟の数年間を書いた作品。 生活が生き生きと描かれていて、ほんの少ししか出ないキャラクターでも生きているのが見事。 著者がずっとこだわっていたであろう、芸術家の戦争責任についても時折滲ませてある。 宇野亜喜良さんの表紙・挿絵も良かった。 ただ、解説で山田太一氏が続編の重大なネタバレをしていてショックだったんですが…そういうことなんだろうかと思っても今作でははっきり書かれていなかったから…書かないで欲しかったなー…。 でも続編は読みたい。2021/02/06
ヒラP@ehon.gohon
15
昭和16年から昭和20年まで、小学校3年生から小学校6年生に戦争の開戦と終戦を体験した、主人公の瑞々しい記録ではあります。 あまりにいろんなことが凝縮されていて、息の詰まるような展開にいつか呑み込まれていました。 この作品が児童文学であり、小学生向けの文庫に収録されていることに驚きを感じます。 平和にどっぷりつかった今の子どもたちにどのように受け取られるのか、そのつなぎ役を務めるのが、自分たちの課題だと思いました。2018/03/27
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