内容説明
都会のまんなかに暮らしながらも、心うばわれるのは、季節のおとずれや生きものの気配。大家族を養うため、家と会社のあいだを行き来するマルコヴァルドさんのとっぴな行動とユーモラスな空想の世界が、現代社会のありようを映しだします。小学5・6年以上。
著者等紹介
関口英子[セキグチエイコ]
埼玉県生まれ。大阪外国語大学イタリア語学科卒業後、翻訳家として活躍
カルヴィーノ,イタロ[カルヴィーノ,イタロ][Calvino,Italo]
1923‐85。現代イタリアの代表的作家。キューバで、農学者の父と植物学者の母のあいだに生まれる。幼いときに北イタリアのサンレモにもどり、20歳まで過ごす。第2次世界大戦中、パルチザンに参加し、ドイツ軍と戦う。戦後、トリノ大学を卒業し、出版社勤務、雑誌編集などをしながら小説を発表し、注目される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
89
マルコヴァルドさんは、イタリアの都市に住みながらも、自然の美しさや四季の移ろいに強く心をひかれている。だが、そんなマルコヴァルドさんが経験する四季は、なぜか落ち着かず、どこかシュール。5巡する四季20の話が収められているが、それらの短い話は、4コマ漫画のようで、しかも、最後には強烈なオチがついている。カルヴィーノ自身が「現代のおとぎ話」と呼んだというこの作品、子ども向けというよりは、大人向けといった方がいいようだ。2020/02/14
KAZOO
78
イタロ・カルヴィーノのこのような作品が岩波少年文庫に入っているとは知りませんでした。春夏秋冬での季節ごとになっていて全部で20の短編集です。物語も結構エスプリの利いたものがあったりしますが、日常の生活の何気ないことから事件が始まったりして楽しめます。最後に作者の親切な解説があります。またこの中の挿絵もぴったりな感じです。2015/08/01
はる
61
マルコヴァルドさんは都会の真ん中に暮らしながらも、心奪われるのは季節の変化や生きものの気配。大家族を養うために頑張って働きますが、いつも失敗してばかり……。初めはナンセンスなユーモア小説かなという感じでしたが、読み進めるともっと深い、作者のシニカルな現代批判に気付きます。都会で暮らすことのいびつさ、貧しい労働者階級の哀愁…。あとがきにもありますが、今の日本の姿と少しも変わりません。特に印象的な植木鉢のエピソードは結末が哀しい。ラストのクリスマスの話が幻想的に終わるのも象徴的ですね。2023/07/22
たつや
50
挿し絵のお蔭でマルコヴァルドさんのイメージがすぐに掴めました。ほのぼのした、マルコヴァルドさんの春夏秋冬にちなんだ短編が季節の順番で進む!面白い構成になってますが街中で偶然見つけたキノコを独り占めしようとするマルコヴァルドさんの貧しくけなげな雰囲気が哀愁あって好きです。2017/02/16
マリリン
46
シュールで風刺的で愉しい! 読むほどに作品の情景が浮かび上がりどっぷりその世界に浸れるカルヴィーノの魅力満載の短編集。特に「がんこなネコ達のすむ庭」「こどもたちのサンタクロース」は『まっぷたつの子爵』を想わせる作品。他の作品では「別荘は公園のベンチ」と「毒入りウサギ」「けむりと風とシャボンの泡」が印象深く気に入った。軽犯罪や他人の目をものともせず社会や環境問題、道徳的観念等々常識を覆すような突飛な発想を絡めたカルヴィーノの世界、ただただ惹きこまれるように愉しんだ。心地よい弛緩が得られる。2021/01/20