内容説明
『あらしの前』から6年がたち、戦争は終わりました。ドイツ軍の占領で、つらい毎日を送ったオールト家の子どもたちですが、悲しみを乗り越えようと、とまどいながらも前に進み始めます。すると、少しずつ希望の光がさしてきました。小学5・6年以上。
著者等紹介
ヨング,ドラ・ド[ヨング,ドラド][Jong,Dola de]
1911‐2003。オランダのアルネムで生まれる。若いころから作家として活動する一方、新聞記者としても活躍する。ナチス侵入の数日前にオランダを離れ、モロッコに逃れる。幼いころから習っていたバレエの先生をするが、のちにアメリカ合衆国へ渡り、戦後に市民権を得る。第二次世界大戦中の経験や、オランダから材料をとった作品をいくつか発表し、評判を呼ぶ。1947年、『畑地は世界』(オランダ語)にアムステルダム市から文学賞が贈られる。ミステリー作家としても知られ、1964年には『時のコマ』でエドガー・アラン・ポー賞を受賞
吉野源三郎[ヨシノゲンザブロウ]
1899‐1981。東京生まれ。編集者、評論家、作家、翻訳家。新潮社版「日本少国民文庫」の編集主任を務め、「岩波少年文庫」の創刊にも尽力。雑誌「世界」の初代編集長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
69
オールト一家の戦後。戦争は子どもたちの心に深い爪痕を残していた。大好きだった兄の死後、ルトは心が空っぽになっている。戦時中大人たちに混じって抵抗運動の手伝いをしていたピムは、再び子ども扱いされるようになり不満を感じている。二人にとっては今だに戦争は自分と密接に繋がっていて、戦争以前の生活に戻れないのだ。そんな二人が、別の何かを見つけて新しい生活スタイルを確立していくまで。戦争の影響力の強さについて、改めて考えさせられる。2021/12/22
はる
60
ナチスの占領から解放されて1年。オランダの小さな村に暮らす医師一家の温かな物語。戦争によって荒廃した街並み、乏しい物資、そして傷ついた人々の心…。その風景は震災が続いた今日の日本の姿に重なります。しかし困難な状況でも屈せず明るく振る舞う人々。若者たちが自らの夢に向かって進みだす姿は、明るい未来を予感させます。幸福感溢れるエンディング。あとがきの斎藤惇夫さん。作品に対する想いが熱い!2020/02/07
たつや
52
岩波少年文庫には、予想外に戦争もの、反戦ものが隠れて多いのですね。とてもよかったです。前作から約6年のオールト家を描いている。戦争前は大変幸せだったオールト家の人々が悲惨な戦争の後から立ち直っていく描写が、涙ぐましくもあり、勇気をもらえる。いつも、心に小さい太陽をの台詞が好きです。ウサギのシチューも、すごく美味しそう。日本だと震災や、先日の新潟の火事の後、どう立ち直るのか?心のもちよう、あり方を考えた。2016/12/24
のえる
48
図書館本。中川李枝子氏紹介本。 ファン・オールト一家の安否を気づかう問い合わせがアメリカの子どもたちから沢山届いたことを受けて書された本作。物語は5年も続いた戦争が済んでから1年経った時期から始まる。世界中のたくさんの家庭で起こったように一家もひとり欠け、決して楽ではない辛い日々を雄々しく立派に生き抜こうとしていた。 戦争の悲劇。戦争は人々の心や気持ちを深く傷付け、考えや行動を変えてしまった。→2021/11/28
帽子を編みます
44
「あらしの前」から6年後、戦争終了後の話です。ルトは14歳、自分を持て余しています。あの明るいいたずらっ子だったピムも妙にスレています。小学校低学年から任務を負うような生活は正常な子ども時代を奪いました。そしヤン…。語られないその出来事の辛さ。あらしのあと、すぐに切り替えて新しい生活が始まるわけではないのです。ただ前巻で逃れたヴェルナーが帰ってきてくれました。戦争の跡が残る市街、食糧不足の日常、それでも人々は進みます。最後は努力を続けたヤープの演奏会の成功で終わります。希望の光喜びが続きますように。2025/01/25