出版社内容情報
はるかな国ナンギヤラ.怪物をあやつり村人を苦しめている黒の騎士テンギルを倒そうと,ヨナタンとカールの兄弟は最後の決戦に挑んだ.勇敢な2人の姿を叙事詩風に描いた作品.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Gotoran
56
権利や動物の権利の擁護者として知られあらゆる虐待に反対の立場を表明したと云うアストリッド・リンドグレーン、彼女が60歳代で恐らく自己の人生観や死生観などを織り込みながら著したに違いない本作品。生と死、愛と憎しみ、正と邪との戦いを綯交ぜにして、クッキーとヨナタンの素直で純真で勇敢な兄弟の姿を抒情詩風に描く。深い読みで解ってくる最後の場面、決して自殺礼さ讃ではない。登場人物、物語の世界観は詩情豊かでファンタジーそのもので不思議で心に残る作品。河合著書『ファンタジーを読む』からの派生図書、第2弾。2019/08/24
chiaki
28
病弱で死が近い弟クッキーに、兄ヨナタンは優しく死後の世界ナンギヤラの話を聞かせてあげます。でも先にナンギヤラに行ってしまったのは兄の方で。間もなくクッキーも追い掛けますが、もうこのまさかの展開にまずは心揺さぶられます。幸せに過ごせるはずのナンギヤラは独裁者の支配下にあり、ヨナタンは国を救うため勇敢に立ち向かいます。そして無謀にもそれを追い掛けるクッキーがもう愛おしくてたまらない!結末は切なくもとても美しく描かれており、この兄弟の愛の深さにただただ感動。2人がこれからを何不自由なく幸せに暮らせますように。2023/09/30
シュシュ
26
死んで別の世界に行った兄弟の冒険ファンタジーかと思って読んでいくと、ただの勇者の物語ではなかった。平和のためであっても人々が殺し合うことには苦しむ兄のヨナタン。それはあってはならない冒険だという。彼は敵の命も助ける。裏切り者であっても死んでいくのを見るのはかわいそうに感じる弟のクッキー。この兄弟は、殺し合いの末に平和になった世界からまた他の世界へいく。兄弟が行きたかったのは争いのない平和な世界。この作品が発表されたのは1973年。真の平和について考えさせられた。2019/12/14
ソングライン
19
肺の病で死の床にいる弟カールに、死後に待つ国ナンギャラの存在を語る兄ヨナタン、弟を火事から救うために、身を犠牲にした兄とカールのナンギャラでの冒険物語です。正義を貫き、慈悲と勇気を持つ兄とそれを慕う純粋な弟。彼らは、悪の騎士と怪物を退治しますが、傷ついた兄はすでに命が尽きようとしていました。悲しくも、清々しい兄弟の物語でした。2019/02/26
ヒダン
18
河合隼雄「ファンタジーを読む」より。どんなに危険だって、「そうしなければ、もう人間じゃなくて、けちなごみくずになってしまうからだよ」という台詞が強烈で悪の組織と戦う勇気の物語ではある。でも裏切りもあるし死がすごい身近で、多感な子供時代に読んでいたら何に引っかかっるのだろうか。今の自分はナンギヤラに来ても幸せではないと思う人がいることが哀しい。それとナンギヤラ、テンギル、カトラ等のカタカナ固有名詞の象徴するニュアンスは何かも気になる。ナンギリマも言うほど良い世界ではないような気がするのはひねくれてるかな。2016/09/04