出版社内容情報
箱館の港から出帆した順吉丸は、嵐にあって南へ流され、台湾「チョプラン」の地にたどりつきます。八歳の少年、市松は、船頭の文助と先住民の集落で生活をはじめ、たくましく成長していきますが……。
内容説明
嵐にあって舵をうしない、たどりついたのは「チョプラン」の地。実際の漂流の記録にもとづいて描く、台湾東海岸の風景と、海がつないだ交流の物語。
著者等紹介
小林豊[コバヤシユタカ]
1946年、東京生まれ。日本画家、絵本作家。『せかいいちうつくしいぼくの村』(ポプラ社)で絵本の創作を手がけ、産経児童出版文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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モリー
64
私たちの祖先は、大昔から川に船を浮かべ山の幸を海辺へ海の幸を山里へ運び、たとえ言葉が通じない者同士でも物々交換と同時に心を通い合わせてきたのだと思います。川と同様、大海にも世界を繋ぐ潮があります。国を閉ざしていた江戸時代、函館から台湾へ漂流した漁師達の実話を元に作られた絵本は、言葉は違えど人間は皆同じだと教えてくれます。山育ちの私は“海”というものを、国と国を遠く隔てるもののように感じてきました。しかし、船に乗り風と潮の流れを利用すれば江戸時代であっても、台湾や中国もお隣さんだったのですね。2020/08/29
けんとまん1007
41
漂流してたどり着いた先での暮らし。その中で、帰る希望を持ちながら、日々の暮らしを営む。漂流者という過酷な状況に置かれた人たちを、きちんと扱うことのできる人達の素晴らしさ。人は人同士、通じるものがある。2020/09/04
Smileえっちゃん
39
(1802年)11月、雪の舞う蝦夷地から江戸に向け、船頭文助、水夫8人、8歳の市松を乗せ出帆。途中大シケに会い南へ流され、67日目台湾の東チョプランに漂着。島人との生活が始まるが、環境や習慣の違い、強制労働で生きる希望もなくし次々死んで、文助、市松2人になる。5年が過ぎた頃マアンの商人の仲介により、帰れることになった。市松にとっては7年ぶりの故国。勉学の為長崎に残り、文助は懐かしい函館に。市松のチョプランは故郷になった。文助は何も語ることなく海を見ながら過ごしたと・・きっと仲間と一緒に帰りたかったでしょう2023/07/28
いろ
22
鎖国の時代に小樽から漂流,台湾の島に流れ着いて5年間過ごす船頭と少年のお話。少年は異国の地で8歳~13歳。少年目線だけでなく,船頭目線,水夫目線での異国を考えながら読む。少年は柔らかく吸収し馴染んで成長するが,成長が終わっている水夫たちは,絶望の末,1年足らずで命を失ってしまうところに胸が痛む。帰国時とその後の少年と船頭の気持ちの違いも感慨深い。溺れる友達を助けたり,日本刀で村のために大鍋を買う事が転機につながったり,狩猟を見学,祭…展開が多々あり読み応えたっぷり。9歳男児も1番気に入り再読繰り返す。2017/09/19
ヒラP@ehon.gohon
15
江戸時代に、海難で外国に漂着した人間はいても不思議はないけれど、記録として残っている事実、日本に帰った来たという話には、感慨深いものがあります。 このお話は、記録を基にした創作ですが、小林豊さんだからこそ描ける物語だと思います。 異国の地の文化も、細かく補足を入れつつ描きあげて、とても重厚な絵本になっています。 紆余曲折があって無事に帰国できた二人でしたが、鎖国時代のお話だから、単純なハッピーエンドではなかったことも忍ばれます。2017/09/15