出版社内容情報
コロンブスの航海から半世紀,スペインの少年エステバンは,誘われるまま夢をいだいて新大陸探検に加わった.しかし,伝説上の黄金都市をめざす男たちの残虐な行為を目の当りにして少年の心は大きく揺れる.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
円盤人
4
大航海時代、北米の黄金探索に同行した地図師のエステバン少年は、五分の一税横領の疑いで裁判を受ける。判決までの成り行きと主人公の回想が並立的に描かれていくが、欲望で失われる人間性に描写の重点が置かれている。その点、ジョン・ヒューストンの映画『黄金』(1948年)とまるまる同じで、目新しさはない。ただし、ネイティブ・アメリカンやスペインの習俗、現地の少女シアと心を通わせる展開などを細やかに描いており、その点で先行作品と一線を画す。看守のドン・フェリペなど一部の登場人物を生かしきれていないのが少々惜しいところ。2023/05/17
nono
3
大航海時代。地図師の少年エステバンは、前人未到の地の地図を作ろうと、新大陸の黄金を求める探検に同行する。 本を手に取ったのは、太陽の子エステバンというアニメの原作だということから。アニメと原作は異なるのかもしれないが、本作はただの子どもの読み物ではない。岩波らしい、古典的良作だ。主人公が黄金を盗んだとか、仲間を殺したとかいう罪に問われ、裁判を抱えているという予想外の設定があり、またその結末はきわめて余韻のあるものだった。高学年の少年に勧めたい。2015/10/03