出版社内容情報
遠い国から帰ってきたばかりの健三が雨の日に出会ったのは、思いがけない人だった――妻や親戚との関係に悩む男の日常に、突然立ち現れる過去の影法師。漱石自身の体験をモチーフとしながら、純度の高い小説として昇華した晩年作。
内容説明
「人間の運命は中々片付かないもんだな」遠い国から帰ってきた健三がある雨の日に出会ったのは―妻ともぎこちなく、親戚にも悩まされる男の日常に現れた過去。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐうぐう
28
自伝的要素の強い作品と言われている『道草』。漱石には、自身の体験をモデルとした小説がいくつもあるが、『道草』はその手のタイプとはかなり趣きが違う。体験をあくまでモデルとして物語にするのではなく、『道草』は過去の自分を見つめ直し描くことこそを目的としている。ゆえに、漱石の年譜上に起こった出来事がそのまま『道草』でも起こるのだ。妻との関係が冷え切っている主人公・健三は、縁を切ったはずの義父から生活費を要求される。姉や兄、妻の父との関係もギクシャクとしている。(つづく)2018/03/18
たつや
7
猫を発表した頃が舞台。縁を切ったはずの義父に執拗にたかられ、義父だけにとどまらず、身内にせびられる健三は漱石が、モデルと言われているので、ほぼ、自伝的作品だ。割りとドロっとしていて、大正に書かれているが、昭和的で面白かったです。2024/12/09
かずみ@スマホ
0
全編金の貸し借り、親戚のしがらみ、夫婦間のいさかいなどで読んでてげんなりした。健三はツンデレこじらせ過ぎだろ。2021/08/22
鯉二郎
0
道草を読むのは文庫本で読んで以来、2回目。新しい注解はとても詳しく、深読みすることができた。漱石の分身のような健三には、養父母をはじめ、何かと口実をつけて金を借りようとする人が寄ってくる。奥さんとも機嫌が悪いと口も聞かない。年が年中ストレスをかかえた学者の煩悶。読んで明るくなれる箇所はほぼないと言っていい。時代が変わっても、人間が生きていくには避けて通れないものが死ぬまで連続するなとしみじみ感じさせる。2018/03/18