出版社内容情報
近代哲学の基盤である批判哲学を確立し，ギリシア以来のあらゆる哲学的課題を論じつくしたカント．世紀末といわれ未曾有の転換期を生きつつある今日，それらの著作から汲み取るべきものはあまりにも多い．講義録・書簡を含むその全著作を，国際的水準にある日本のカント研究者の参加を得て全編新訳で刊行する決定版全集．
感想・レビュー
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いとう・しんご
10
第1批判出版から遺稿までを含む長短様々な小品集。カントの思想全体を多様な視点から見渡す上でとても示唆に富んでいる。第1批判で理性の限界を明示して人間の「自由」を解放した上で、目指すべき目標を最高善において「自らの理性を用いる勇気を持て」と促すカント、そして啓示宗教ではなく、理性信仰を通して神の前に立とうとするカント。独善哲学や感情哲学が狂信や迷信の混迷に至ることを警告する彼は、ヒトラーやスターリンを予言しているとも受け取れるテキストまで残しているのです。2025/04/15
