出版社内容情報
「科学者の随筆家」として親しまれ,夏目漱石にも称賛された文才と科学者の視線を兼ね備えた独自の文章で,多くの読者に支持されている寺田寅彦.旧全集を全面的に見直し,随筆をテーマ別に再編集して各巻に解説を付し,さらにローマ字を和文表記にし,新字体新かな表記を採用するなど,より親しみやすい新全集を刊行します.
目次
物理学序説(緒論;物理学の対象;物理学の目的とその方法)
海の物理学(海と海水;海水の運動)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よこしま
27
今まで青空文庫にて氏の自然を含めた災害の著書を読んできました。全集の中だと、それらは全て随筆の中で。全集において唯一の科学論が、この十集になります。中が気になりまして!◆応用となる第二章「海の物理学」は、これまで地震や津波の随筆を書いていた部分のコアですから、大変貴重なものです。世界の海洋を股にかけ慎重に調査する姿はお手本になりますし、分かりやすく説明を書いている。なかなか出来ませんよ。◆また、著書とは離れますが、関東大震災を予知していた今村明恒氏や大森房吉氏ら地震学の開拓者もリスペクトしたいです。2015/02/23
Kaorie
11
「物理学序説」目を通したものの、物理に関して何の知識もないので非常に時間がかかり、内容もよく分からなかった。「海の物理学」は物理学的な話もあったが、海水温の上昇や津波の問題にも通ずる所があり面白く読めた。何より「海の物理学」の付録に、実験の際の心構えのようなことが書いてあるのだが、器具の使い方をこと細かく記してあって、寺田さんの几帳面で注意深い性格がよく出ていた。器械の使い方に関しては何も実験に使う器械だけではなく、PCのような器械にも言えることだなと、外付けHDDがトラブルに陥っている今、教訓になった。2014/11/18
黒豆
3
元々科学編を2冊読んでいたが、NHKカルチャーラジオを聴講「我輩は猫である」に頻繁に登場する寺田寅彦を想定した寒月君にふれ、もう一冊の科学編を読む。内容は「物理学序説」物理学と哲学、物理学と生物学、アインシュタインの相対性理論直後の著作で、光を特殊なものとして捉え、時間と空間に対する捉え方など素晴らしいと思う。後半の「海の海洋学」大正期の著作であり、その時代に海の深さをどうやって測るか?深いところの温度をどう測るか?など創意工夫のかたまり、付録の観測する人の心得など今でも一読したら!と思わせられた。2016/11/18
いちはじめ
0
未完の「物理学序説」と、ローマ字で発表された「海の物理学」の二篇を収録。ことに前者は、科学的思考とは何かから説き起こし、3.11以降の科学のふりをしたデマが数多く飛び交う中で読んで、ほっとした。一服の清涼剤といった趣。2012/01/11
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