出版社内容情報
吉野作造の政治思想は,複数政党制の確立と脱植民地化,国内民主主義と国際民主主義とを不可分とした点で他に類を見ず,今日の課題につながる先見性を示している.初めて公開される幻の吉野日記を加えて,その全体像に迫る.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
5
吉野は如是閑、大山と同様に歴史主義者であるが、理想主義者であるという点で他から分けられる。歴史とは人間精神がより高貴なものに完成される過程と信じている。この信条はキリスト教信仰やヘーゲルに根っこを持っている。だから無政府主義を達成不可能であるがそれに向かって努力すべき理想として受け入れることができるが、また国家を「まだ見ぬ自分」、よりよき自分を実現するための手段として容認もする。吉野の民主論もまたエリート主義的要素がある。民主政は人格の完成を目標とするもので、民衆の役割は選良な指導者を選ぶことに限られる。2019/05/02