出版社内容情報
ギリシア悲劇は詩形式の文芸である.清朗の春,新作が上演された.余りにも人間的な,余りにも現代的なギリシア古典文芸の精華に新たな息吹を与えることを願い,全篇を新訳,脚注・解説を付し,夢を託す陶器の破片のように凛と美しい「断片」をも集成して刊行する.ここにいるのは,他でもない,私たちなのである.
目次
アルケースティス
メーデイア
ヘーラクレイダイ―ヘーラクレースの子供たち
ヒッポリュトス
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
57
三代悲劇詩人の一人エウリピデスの作品集。アイスキュロスやソフォクレスと比べエウリピデスの悲劇は開かれているという印象を持ちました。前二者では悲劇は神の力や予言といった人間を超えた強大な力を前に、それを迎えまたは耐える英雄のものでしたが、エウリピデスでは悲劇は不貞な夫への怒りや秘密の恋を暴かれ退けられた誇りから起きるのであり、彼らの悲劇はなんと私たちの身近にあることか。そしてだからこそ、夫に裏切られたメディアの怖ろしい情念や妻を身代わりにしたアドメートスの欺瞞が自分のものとして苦く迫ってくるのだと思います。2021/08/13
風に吹かれて
21
エウリーピデース(紀元前480年頃‐紀元前406年頃)の悲劇四編収録。 アポローンの計らいで死期が差し迫った夫アドメートスの身代わりとして死ぬことになる妻『アルケースティス』、コリントスの王クレオーンが彼の娘と結婚したイアーソーンの先妻『メ―デイア』を追放する悲劇、へーラクレースの娘たちの一人が神託に従って死の犠牲を甘受する『へーラクレイダイ‐へーラクレースの子供たち‐』。 →2023/03/11
fseigojp
18
やはりエウリピデスといえばメディ―ア イッポリュトスもアンドロマケもバッカイもよかったけれど2017/05/18
fewaji
0
アルケースティス。2009/06/13
豆大福
0
「アルケースティス」「メーデイア」「ヘーラクレイダイ」「ヒッポリュトス」の4編を収める。これまで敬して遠ざけていたギリシア悲劇だが、チャレンジしてみると思ったより読みやすい。シェイクスピアでもラシーヌでもイプセンでも、西洋の多くの戯曲の源流がここにあるのを実感する。白眉は、やはり「メーデイア」だろうか。真っしぐらにカタストロフに突き進んでいく様は、凄まじい。2025/02/27