出版社内容情報
「死刑囚」のくびきを外し、袴田巖が真の自由の身になる時がきた。「捏造」が疑われる警察の動き、死刑判決を下し、支持した歴代裁判所の判断、弁護活動の瑕疵……。寡黙な元ボクサーを精神の破綻に追い込んだ責任はどこにあるのか。献身的に支え続けた姉ひで子と弟の人生を重ね合わせながら、世紀の冤罪事件の全貌に迫る。
内容説明
「死刑囚」のくびきを外し、袴田巖が真の自由の身になる時がきた。証拠の捏造まで行った警察の動き、死刑判決を下し、支持した歴代裁判所の判断、弁護活動の瑕疵…。寡黙な元ボクサーを精神の破綻に追い込んだ責任はどこにあるのか。献身的に支え続けた姉ひで子と弟の人生を重ね合わせながら、世紀の冤罪事件の全貌に迫る。
目次
第一章 事件
第二章 拷問
第三章 捏造
第四章 死刑
第五章 喪心
第六章 釈放
第七章 帰郷
第八章 無罪
著者等紹介
藤原聡[フジワラサトシ]
ジャーナリスト。1959年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、共同通信社に入社。社会部デスク、長崎支局長などを経て編集委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
47
新刊コーナーより。あまりにも長い時間を、尊厳を、そして心身の健康をうばわれてきた袴田さん。彼について何冊か読んだこともあったけれど、58年経ち無罪を獲得した後の、ご姉弟エピソードまで描かれているのはこの本が初めてではないでしょうか。お二人を現在幸せにしているものが、二匹の猫だと知って思わず泣き笑いしてしまいました。ささやかな幸せを奪った捏造への怒りも強いですが、同時にこの事件が長引いたせいで真相にたどり着けないご遺族の方たちのお気持ちもいかばかりか…。2024/12/15
kawa
30
司法当局による証拠物件の捏造を再審裁判で認定。ショッキングな袴田事件の全貌を、袴田巌氏と氏を支え続けてきたお姉さんのひで子さん、支援組織の動きなどを通じてリポート。実に48年獄につながれ、さらに無罪確定まで10年。長い年月の苦しみが氏の精神状態にも問題を生じさせている。過ちを正すのに何故かくも時間がかかるのか。一度掛け違えたボタンを戻すのは、メンツや自己保身が影響して容易なことでないのか。本書から日本の司法制度の暗い闇が垣間見える。2025/02/25
あじ
23
袴田事件についての書籍はこれまでに数冊読んできており、概要は知っていたつもりだが“バスの中の落とし物”については記憶になかった。そして容疑者…。無罪確定前後の新刊は本書の他にもあるので、機会をみて読み進めていきたい。私が知りたかったのは、釈放後の巖さんと姉のひで子さんの様子だった。支援者に支えられ、お二人は水入らずの家族生活を続けてこられたようだ。そして今年、我が家と同じく新たな家族を迎えていらっしゃった。微笑ましいエピソードに目頭が熱くなったのはいうまでもない。ごく一般的な日常を末永く過ごして欲しい。2024/12/23
koji
14
2つ書きます。①袴田さんの58年に及ぶ闘いを無に帰さないためにも、再審法改正、中でも3つの論点(証拠開示の明文化、検察官による不服申し立ての禁止、再審手続きの整備)の早期決着を求めます。②僭越ですが、袴田巌さんに一編の詩を作りました。恥ずかしながら披露します。「袴田さんの精神は深い闇の中にある。まんまと逃げおおせた犯人にも、捏造の構図を造り袴田さんの尊厳をずたずたにした検察・警察の権力機構にも、怒りを表せない。しかし、”生きている”という存在それだけで、正義を体現し続けている希有の人だ。生き続けて下さい」2025/03/23
てくてく
4
報道やドキュメンタリーその他で事件自体はある程度知っており、姉のひで子さんの傑物ぶりに興味をもっていたので購読。無実を確信して戦う中で精神に不調をきたすようになった弟、弟への愛情と父母への孝行として弟の無実を認めさせることに取り組む姉、支援者、そして静岡県警の取調べに関して悪名高い紅林警部補の薫陶を受けた警官による不適切な取調べや証拠の「捏造」がわかりやすく描かれている。再審法改正の機運が盛り上がる中、今度こそ改正まで進んで欲しいと思う。2025/03/11