出版社内容情報
一九八四年、台北。駆け出しの画家、阿政のもとに奇妙な依頼が持ち込まれた。古い絵画の修復だが、作者は明かせないという。阿政が恋人の新聞記者、方燕と調査に乗り出すと、長い間歴史から抹消されていた画家・陳澄波の存在が浮かびあがり……。日本統治時代の台湾に生まれ、二・二八事件で幕を閉じた苦闘の生涯を描く歴史小説。
内容説明
一九八四年、台北。駆け出しの画家、阿政のもとに奇妙な依頼が持ち込まれた。古い絵画の修復の仕事だが、作者は明かせないという。阿政が新聞記者の方燕と調査に乗り出すと、戦後長い間歴史から抹消されていた画家・陳澄波の存在が浮かびあがり…。日本統治時代に生まれ、台湾近代美術の先駆者となった画家の生涯をたどる歴史小説。第3回台湾歴史小説賞大賞受賞。
著者等紹介
柯宗明[カソウメイ]
作家、脚本家、映像・舞台監督。長年、テレビや演劇の仕事にたずさわり、テレビ番組『台湾郷鎮文化志』やドキュメンタリー『台湾美術史』などを手がける。2018年に初めて執筆した本作で第3回台湾歴史小説賞大賞受賞
栖来ひかり[スミキヒカリ]
ライター。山口県出身。京都市立芸術大学美術学部卒。2006年より台湾在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takao
4
ふむ2024/04/19
ルッコラ
2
陳澄波は日本統治時代生まれの台湾人画家。近代美術を切り開くために日本に留学し、上海で働き台湾に戻って絵を書いた。日本統治下の台湾美術界はどの国を祖国と認めるかで意見が分かれ、光復後は前衛対伝統、右翼思想対左翼思想、本省人と外省人、大陸寄りか台湾本土志向か、日本寄りかアメリカ寄りかと対立が先鋭化したという。そして多くの芸術家が芸術に対する感性のかけらのない政治家の犠牲となった。推理仕立てで陳澄波の生涯を通じて台湾の歴史、文化史をたどる力作。陳澄波の奥さんが良い人過ぎて、自分も來世は見習おうと思った。2024/05/21
ケント
1
台湾人画家、陳澄波の謎を解く話。中身を反映してか、小説というより学術書チックな書影。日本統治下の台湾に生まれ、日本で絵を学び、上海で絵の教師として働き、光復後の台湾に散った。華人とも日本人ともみなされない不安定な立ち位置である台湾人。陳澄波が自分の家族を描いた絵「私の家族」に込められたであろう意図を解き明かしているが、その内容には感情を複雑に揺さぶられた。2025/01/14
ねこやすみ
1
図書館で借りた。再読希望。2024/07/01
fraubaeren
1
近々嘉義を訪れる予定があり、読んでみた。歴史から消された、嘉義出身の画家・陳澄波にまつわる歴史小説。陳澄波とその同時代人達の美術や台湾にかける思いはもちろんのこと、19世紀後半以降の台湾における「祖国」に関する自己認識、白色テロなどについて、小説ではあるがまるで追体験しているようだった。また、日本人としては当時の上海については日中関係の文脈でしか知らなかったが、台湾人の視点からの描写があり、これが特に興味深かった。2024/04/11