出版社内容情報
アジア・太平洋戦争屈指の激戦地、硫黄島。しかし、本土から遠く離れたその地に兵士たちの遺骨一万体以上が放置されていることはあまり知られていない。遺骨の収容を望む遺族たちの切実な思いと、それを踏みにじり続けてきた政府――国家によって死地に追いやられた人々が死後もなお見捨てられる日本の「戦後」を問い直す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
たまきら
50
東京大空襲が海外の映画監督や作家の関心を引くようになり、多くの外国人が「なぜ日本政府は何もしないの?」と聞いてきます。そして見捨てられた庶民・犠牲者たちの現実を知り、「なんで生存者たちが日本政府に賠償を求めるのかわかった」と言います。今の政治を見て(ああ…変わってないんだなあ)と思い、彼らの死体の上に重ねられようとしている新たな苦しみを思います。いつこの権力者の暴走と国民の無関心という負の連鎖から抜け出せるんだろう…。心からすべての声なき犠牲者へ祈りを捧げます。すごい本でした。2023/07/05
kawa
29
昭和20年3月、太平洋戦の有数の激戦地・硫黄島では日本軍守備兵21000人のうち19900人が戦死玉砕した。その硫黄島の地には未だ1万体以上の遺骨が収容されずに放置されているという。遺骨の収容を望む遺族の切実な思いを踏みにじり続けてきた政府、その状況をレポート。様々な理由があるにせよ、不都合な事実を隠そうとする政府の姿勢には不信感が増幅。沖縄・辺野古基地の埋め立て土砂確保のために日米兵士や住民の遺骨が未だ残る本島南部の土砂を充てようとする企みも、基地問題の賛否以前の人道的な問題だ。 2024/08/09
Our Homeisland
21
素晴らしい本を書いて下さってありがとうございます、と著者にお礼を申しあげたいです。一人でも多くの人に読んでもらいたい本だと思います。著者の栗原さんは今年本当にお世話になった新聞記者の方です。フットワークの軽さ、視点の確かさと公平さ、このことに関わる真剣さと根気強さ、本当に素晴らしい活動の成果がこの一冊に結実したのだと思います。「それは特殊で異常なことですよ。」ということを分かりやすく示して問題提起をして、向かうべき方向とやり方も示してくれています。面白く読めて勉強にもなった一冊でした。2023/07/02
アーク
3
映画にもなった硫黄島の悲劇は未だに続いていることが分かる一冊。戦後70年以上が経っても、硫黄島での戦没者に対しての日本政府の冷淡な態度は何も変わっていないし、何とかして遺骨だけでも帰郷させたいよな。そして日本であっても一般人には上陸もできない硫黄島の歴史やそこであった激しい戦闘についても本書で知ることができた。日本史の一ページとして読んでおいてよかった一冊。2023/06/02
トト
3
硫黄島と言えば、太平洋戦争末期、日米激戦の地として有名な島。そこに今も残る遺体の収容について、戦時中の状況、現代に至るまでの遺体収容の歴史、その他沖縄、シベリア、東アジア、東南アジア、海底に未だ残る遺体についても言及する。戦死者240万人に対して見つかっていない112万体。国の責務において収容、遺族への返還をしなければと筆者は語る。人道的には間違いないと思う。しかし国の責務とはいえ、膨大なコストは未来の国民の財産から捻出することを考えると、負の遺産を相続し続けていけるのか、この国の未来に不安を感じます。2023/05/02
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