出版社内容情報
使っちゃいるけど分からないこの概念をめぐる論争の軸を明確にし,初歩から現代の議論までを平易に解説.
内容説明
入門からもう一歩進んで考える。論争を整理する考え方の軸を設定し、基本から現代の議論までていねいに説明する。
目次
1 序論―万物は因果的だ
2 因果的活力
3 プロセスとメカニズム
4 差異形成―違いをもたらすこと
5 決定性
6 確率上昇
7 操作と介入
8 心的因果
解説 因果関係は存在するのか
著者等紹介
クタッチ,ダグラス[クタッチ,ダグラス] [Kutach,Douglas]
1979年生。ラトガース大学(ニューブランズウィック校)PhD.ブラウン大学助教、西インド諸島大学講師を経て、現在CUBRC科学研究員。形而上学、科学哲学、哲学的方法論
相松慎也[アイマツシンヤ]
1983年生。東京大学大学院人文社会系研究科特任研究員。駒澤大学・山梨学院大学非常勤講師。哲学
一ノ瀬正樹[イチノセマサキ]
1957年生。東京大学大学院人文社会系研究科教授を経て、東京大学名誉教授、オックスフォード大学名誉フェロウ、武蔵野大学教授。哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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shin_ash
5
パールの統計的因果推論を補完するつもりで手に取った。難解なイメージのある哲学であるが、哲学における因果性の議論の概要がわかりやすく概観・整理されている。介入主義の解説は並行して読んでいるパールが引用されており、理解を深めることができると共に、統計的因果推論が哲学との境界に位置していることが再認識できた。因果性が単一の論理で片付くものではなく、むしろ第一級の哲学的問いである事を痛感した。どの因果説も一長一短かもししれないが、仮説として因果グラフを構成するレベルでは大いに参考になるので、上手く使って行きたい。2020/01/25
shin
4
因果推論が統計学のある界隈ではブームになっており、Pearl派とRubin派の対立とか言われているが、そもそも因果なんてものがこの世にありうるんだっけという問に応えているのは哲学界隈の人々。この本は因果性をめぐる学説をできるだけ中立的な立場で整理しているので、因果性の論点を俯瞰的に捉えることができる。哲学・論理学の素養はなくても読めるし、Pearlのしばしばある哲学的な言動が何を意味しているのか、少しわかるようになるので大変おすすめ。2020/08/25
Schuhschnabel
4
まず因果性の定義の相違を整理する4つの軸を導入し、その後で因果性を説明するいくつかのアイデアを紹介していくのだが、肝心の4つの軸の使い勝手があまりよくない気がする。おそらく、因果性が世界にあるのかという問題と、それはともかくとして、私たちが原因・結果と日常的に読んでいるものをどう切り出せるかという問題を一緒に論じようとしているからだと思われる。むしろ、単称因果や不在因果といった問題にそれぞれの理論が関心を持っているのか、いるとしたらどう説明しようとしているのかという切り口で整理した方が読みやすいと感じた。2020/01/06
takao
2
・万有引力の法則は因果関係ではないが、神の御業を説明しているのか。 ・因果関係は予言と関係がある。あるいは蓋然性とも。原因と結果の責任問題とか。 2022/04/01
すずき
2
道徳哲学の文脈でどう因果性を扱ったらいいかなというのを念頭に置いてそういう動機で1冊目に読んだが各説が整理されていてよかった。特に道徳哲学の関心でいうとメカニズム説、プロセス説よりは差異形成に注目する説のどれかになるとは思う。これは因果性と呼ぶにふさわしい、みたいな言語的直感は割とどうでもよかったりするので列挙してある批判のうち因果性の概念を何に使うかに応じて重要なものを見極める必要はあるななどとも思った(そういう多元主義って実際唱えてる人はいるだろうけどこの本では特に扱いなし)。2021/03/16