内容説明
粉飾決算事件における共謀容疑で、一貫して無実を主張したが有罪確定した著者。同じ頃、郵便不正事件で厚労省の村木厚子元局長が無罪となった。二人の判決の差は何か。著者は郵便不正事件の研究から未踏の犯罪会計学を切り開き、日産ゴーン事件をも鋭く抉っていく。その核心は、経済事件における特捜検察の捜査思想と冤罪構造にあった。
目次
1 「あの日」からの私(執行猶予の日々;ジオス倒産;自動車販売)
2 郵便不正事件という転換点(郵便不正事件;虚偽公文書事件;無罪判決;大阪地検特捜部;証拠改竄事件;特捜検察の終焉)
3 犯罪会計学で何が分かるか(犯罪会計学の成立;日産自動車カルロス・ゴーン事件;日産ゴーン事件オマーン・ルート)
著者等紹介
細野祐二[ホソノユウジ]
会計評論家。1953年生まれ。82年公認会計士登録。78年~2004年までKPMG日本および同ロンドンにおいて会計監査、コンサルタント業務に従事。04年、株価操縦事件に絡み有価証券報告書虚偽記載罪の共同正犯として逮捕・起訴され、無罪を主張したが2010年有罪が確定。現在、評論・執筆活動のかたわら、自身が開発したソフト「フロードシューター」により上場会社の財務諸表危険度分析を行っている。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kawa
37
無罪を確信していた粉飾決算事件で有罪判決を受けた著者でなければ、指摘出来ない日本の刑事裁判の暗黒振りが凄い。検察官面前証書(供述調書)が裁判の供述内容より優位(「特信状況」というらしい)。甲号証(謄本、会計基準等の形式的書証)に同意するとその部分は争えない等。しかも、これら被告人の不利益は太平洋戦争中の緊急避難的取り扱い変更で、それが80年以上経って相変わらず維持されているそうな。書籍自体の構成や表現はもうちょっと工夫してもらいたいところ多しなのだが、その内容はエグい。2019/08/20
それいゆ
35
村木さんの著書「私は負けない」では、個人批判は一切していなかったので、事件の詳細は伝わってきませんでした。この作者によれば、無実の村木課長を虚偽公文書事件に引きずり込んだのは、直属上司の塩田部長だということです。自身の不透明な金品授受による収賄で逮捕される危険性を感じたので、村木課長のことなど考える余裕がなく、検事にまんまと引っかけられ、口利き依頼と便宜供与指示を認める自白調書に署名したという。特捜検察の冤罪構造は許されないが、真実を供述していれば冤罪は発生しなかっただけに、何か納得いかない気がします。2019/08/19
おさむ
34
東京地検特捜部に逮捕され、無罪を主張したが有罪判決が確定した著者。最近は元公認会計士の眼を活かして粉飾決算を見破る専門家として活躍している。本著の中心は、村木厚子さんが無罪を勝ち取った郵便不正事件と、日産自動車のカルロス・ゴーン会長の特別背任事件の分析・解説。前者はさまざまな書籍が関係者やマスコミから出ているが、それを第三者の視点からうまくまとめており、事件の全体像がよく見える。他方、後者はまだ事件が進行中で、公判も開かれていない中での推測が目立つ。総じて他人の褌で相撲をとっている感は否めない。2019/09/26
ゲオルギオ・ハーン
29
検察庁の特別捜査部の制度疲労、具体的には捜査手法や裁判戦略の時代遅れを2010年の郵便不正事件における大阪特捜部の証拠改竄、2018年の日産ゴーン事件での捜査を挙げて説明している。特に戦時の刑事特別法の名残である『検面調書の特信状況』は取調べの際に作成した調書が法廷での証言よりも優先される(裁判官が特信性を認めた場合)というもので裁判官との組み合わせによっては法廷で証言を争う状況になると検察側がほぼ勝てるという恐ろしいものだ。著者は自身の裁判の経験を研究に活かすことでそうした問題を鋭く指摘している。2022/01/26
ばんだねいっぺい
24
助っ人が呼ばれて、一定の成果を収めた時点で生え抜きのオーナーが、疎ましくなって彼を追い出しにかかるそんな絵が残りました。郵便不正事件を見ても、検察は、検察自身のために、変わらなきゃもったいないと思いました。2020/04/26