出版社内容情報
社会道徳や政治権力と対決し、命を賭けて自由を求めた二人の女性。その生と思想は現代に何を問うのか。
内容説明
『大逆事件』(一九一〇‐一一年)で処刑された唯一の女性、管野須賀子。その約一〇年後、「甘粕事件」(一九二三年)で憲兵隊に虐殺された伊藤野枝。女性を縛る社会道徳や政治権力と対決し、自由を求めて疾走した二人の生と思想を、関係者の証言や資料をもとに描き出す。
目次
第1章 自由を求めて(女性ジャーナリスト管野須賀子;コンベンショナルからの脱出―伊藤野枝の「新しい女」宣言)
第2章 ひたぶる生の中で(社会主義者への道―須賀子の飛躍;社会へ―野枝の炎)
第3章 貧困からの飛翔(忠孝思想との闘い―須賀子の水源;越え切れん坂を越えた野枝)
第4章 転機(無政府主義者へ;風雲児とともに)
第5章 記憶へ(大逆事件;一九二三年九月一六日)
著者等紹介
田中伸尚[タナカノブマサ]
1941年東京生まれ。慶應義塾大学卒。朝日新聞記者を経て、ノンフィクション作家。『ドキュメント憲法を奪回する人びと』(岩波書店)で第8回平和・協同ジャーナリスト基金賞。明治の大逆事件から100年後の遺族らを追ったノンフィクション『大逆事件―死と生の群像』(岩波書店)で第59回日本エッセイスト・クラブ賞。個人の自由と国家の関係を問う著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
belier
2
管野須賀子と伊藤野枝。共に文才があり、正義感が強く、社会主義者あるいは無政府主義者と自称し、有名な活動家のパートナーであり、若くして国家権力によって殺された。その二人のコンパクトな伝記。同じ章で1と2に分けて二人の話を並行して進めたのは読みづらく、途中からまず管野を読み、次に伊藤の話へ進んだ。その欠点以外はよく調べてあり、わかりやすく、よい入門書だった。二人とも素晴らしい個性の持ち主。もっと読んでみたい。2022/02/17
あきこ
2
管野須賀子と伊藤野枝、思想に人生をかけ若くして死んだ。現代から考えると異様である。こんなことが祖国日本で行われていたなんて、北朝鮮を非難できない。結末を知っているだけに読みながら、「そんなこと言っちゃいけない、そんな行動は危ないよ」と心でつぶやいてしまう。そんな読者はいらないと二人から怒られそうだ。世の中の小さなことに気づき、改善したいと思っただけの二人である。そしてその情熱と行動力に胸打たれる。どうか二人の人生がこれから先も語られていきますようにと願う。多くの人にこの勇気を知ってほしい。2017/12/19
ポレ
2
プロローグの気持ち悪さに戦慄した。本編は抑制のきいた筆致で安堵した。プロローグを読んで、投げ捨てるところだったw 関係者への取材により、人物像を明らかにしようとする試みは、没後に経過した年数を考えると、もはや不可能であり、それだけでも意味のある内容と言える。 ただ、間接的な接点しかない管野須賀子と伊藤野枝を並列に扱う意味はなかったと思う。2017/09/20
Masakazu Fujino
2
100年ほど前を生きていた二人の女性、管野須賀子(1881~1911)と伊藤野枝(1895~1923)ともに30歳になる前に殺害された二人の女性。ともに著述という仕事をして、女性の人権と自由を求めて運動し、愛し苦しみ生きようとしていた。彼女たちの求め続けた平等・差別の問題は今もほとんど変わっていないのではないか。 管野須賀子と伊藤野枝の直筆の手紙を見て(この手紙は二つとも最近発見されたものだという)彼女たちの優しさと人間性に強く心を打たれた。二人とも今の女性と変わらない感性を持ち生きた人だった。2016/12/25
lovejoy
0
★★★★2023/11/16