出版社内容情報
ポスト「転回」の時代の歴史理論とは。
内容説明
現代歴史学の系譜や変遷をわかりやすく解説した、歴史理論や史学史を一望できる格好の論文集。戦後歴史学からのパラダイム・シフト、言語論的転回が社会史研究に与えたインパクト、文化史研究やトランスナショナルな歴史、そしてポスト「転回」といわれる現状について、英米圏と日本の歴史学を中心に振り返り、今後の展望を示す。
目次
1 社会史から言語論的転回へ(修正主義と構築主義の間で―イギリス社会史研究の現在;民衆文化史の変遷―「経験」から「物語」への転回;社会史の転回―都市史をめぐる考察)
2 転回する歴史学(物語の復権/主体の復権―ポスト言語論的転回の歴史学;文化史研究の射程―「転回」以降の歴史学のなかで;現代歴史学の挑戦―イギリスの経験から)
3 戦後歴史学との対話(『社会運動史』とニューレフト史学;二宮史学との対話―史学史の転換点にあたって)
現代歴史学への展望
著者等紹介
長谷川貴彦[ハセガワタカヒコ]
1963年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了、博士(文学)。現在、北海道大学大学院文学研究科教授。専門は近代イギリス史、歴史理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ポカホンタス
3
言語論的転回以降の歴史学についての議論を、的確なキーワードを使って、切れ味鋭く、わかりやすくまとめられていて参考になった。ただ、論文集であるせいか、章ごとにほぼ同じような内容の部分がかなりあった。同じ理由で、著者が翻訳した本への言及が何度もあったのでちょっとげんなりした。単行本化にあたってもう少し工夫するべき。岩波書店か・・・。2016/12/30
トキ
0
歴史における主体性 (主観性) の復元に対する渇望を見ていて、ここまで来ると正直言ってついていけない。というのは、過去の人々の内面 (内なる声) について現世の者が考察することを復元と呼ぶことに問題があるだろう。本書を読むにあたって、私の興味は言語論的転回にあった。史料それ自体の言説・表象が現実を構築しているという主張である。文化論、空間論といった諸転回も興味深い。それにしても、本書所収の諸論文は同一の作者とはいえ、問題意識や強調される点が一貫している。「経験」と「実践」への注目が印象に残っている。2020/12/31