内容説明
大坂落城の後、豊臣秀頼とその一族は九州に落ちのびたという伝承が、まことしやかに囁かれた。果たして豊臣家は本当に滅んだのか。大坂の陣を、徳川による大義名分のいくさと位置づける「正史」との緊張関係のもと、敗者たちの視点に立った、多彩な「稗史」が創られ続けた。その生成の実態に歴史学からのアプローチを試みる。
目次
序章 大坂落城―敗者たちのその後
第1章 大野主馬治房の逃亡と一類の摘発(消えた大野主馬治房;『箕浦誓願寺記』から見た大野主馬妻子の摘発;大野主馬穿鑿と妻子の摘発;大野主馬妻子潜伏の謎)
第2章 豊臣国松と霊樹院―豊臣秀頼一類の九州方面逃亡(豊後国日出藩木下家と豊臣国松伝承;熊本藩細川家家老有吉家と秀頼息女霊樹院伝承)
第3章 大坂落城の記憶と慰霊(徳川方戦死者の慰霊と供養;大坂方戦死者の慰霊と供養)
第4章 大坂落城の記憶とその変容―稗史「大坂落城異聞」の成立(大坂落城の慰霊と儀礼の変容;浄瑠璃・歌舞伎大坂落城物の成立―甦る大坂落城後の豊臣主従;稗史「大坂落城異聞」の系譜と成立)
結語 甦る敗者たち―正史と稗史の棲み分け
著者等紹介
高橋敏[タカハシサトシ]
1940年生まれ。1965年東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了。文学博士。現在、国立歴史民俗博物館名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
51
正史での豊家は完全に没落したのであるが、民間の中ではその後も生き残っていた。本書はそのような民間等に伝わる豊臣家を追った一冊。江戸期に見つかった大野主馬の子孫の運命から始まり、九州の小大名に伝わる国松生存説。果ては慰霊から辿る勝者と敗者や浄瑠璃等における秀頼が九州に落ち延びる話など様々な観点から「稗史」の豊家一党を探っている。ほぼ全て初めて耳にする話ばかりであったが、やはり一番面白いのは一行の九州渡りであるなあ。何となく義経の蝦夷渡来を思わせるところもあるし、民間の精神世界的には共通しているのだろうか。2016/08/22
おおきなかぶ
2
挫折しました。2024/09/16
amabiko
1
面白かった。一次史料に縛られた「退屈な歴史学」なんかじゃない。浄瑠璃や非文字伝承までを縦横無尽に取り上げ、「敗者・豊臣・大坂・稗史」vs「勝者・徳川・江戸・正史」の構造を炙り出す。四章構成のうち、第二章は単体で読んでも興味深かった。2017/01/11
駒場
1
『徳川実紀』のような所謂徳川方の正史や現存する書状などと比較しながら、木下家などに一子相伝(口伝)で受け継がれてきた豊臣国松生存説や、誓願寺の記した大野主馬の落城後の動向、コラムでは長宗我部盛親の実子・実親が生き延びて記したという文書などを「稗史」として紹介。その語り手、主体は誰であったのか?というところを比較的平易に書いている。日本史を「科学する」という視点で「正しいか、正しくないか」という価値観だけで切り捨てられてきた部分を丁寧に拾い集めるというスタンスで面白かった2016/03/27
onepei
0
木下家の口伝の話に驚いた。2016/05/10
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- 和書
- 号外!幕末かわら版