『図書』のメディア史―「教養主義」の広報戦略

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  • サイズ B6判/ページ数 325p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784000610742
  • NDC分類 023.067
  • Cコード C0036

出版社内容情報

この10月で再刊後800号を数える「図書」。PR誌の軌跡から「岩波文化」の現在を問うメディア史。

内容説明

戦中戦後に一時の中断をはさむとはいえ、一九三六年の『岩波書店新刊』発刊から七九年、一九四九年の再刊後、八〇〇号を数える岩波書店の雑誌『図書』。その「旗艦的」機関誌であると同時に「読書家の雑誌」を称するPR誌には、激動の時代を生きた著者や数多くの読者の、書物と向き合った悦びと苦悩が刻まれている。「岩波文化」の変容をとおして、読書空間の現代を照らし出すメディア史の快作。

目次

序章 「種蒔く人」の教養メディア
第1章 「岩波文化」ブランドの成立
第2章 戦時期『図書』の公共性
第3章 「戦後啓蒙」の教養主義
第4章 文化講演会の時代
第5章 一億総中流社会の教養
第6章 情報消費社会の書物
終章 デジタル時代の読書家へ

著者等紹介

佐藤卓己[サトウタクミ]
1960年広島市生まれ。1984年京都大学文学部史学科卒業。1987‐89年ミュンヘン大学近代史研究所留学。1989年京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。京都大学博士(文学)。東京大学新聞研究所・社会情報研究所、国際日本文化研究センターを経て、京都大学大学院教育学研究科教授。専攻はメディア史・大衆文化論。「『キング』の時代―国民大衆雑誌の公共性」(岩波書店、2002年、サントリー学芸賞受賞)。「言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家」(中公新書、2004年、吉田茂賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

スズツキ

4
80年に及ぶ歴史のある岩波書店の雑誌「図書」から見えてくる岩波の標榜した「教養主義」の繁栄から没落まで。竹内洋の手がけそうな仕事である。思想軸も違い、かつかなり辛辣なこの本を自社から出版した岩波には拍手を送りたい。2015/12/27

ぽん教授(非実在系)

3
商品として成立しにくい教養主義。しかし岩波書店はこの教養主義を商品として提供していくポジショニング戦略を採用した。その戦術としての兵器がPR雑誌『図書』である。読書人同士の公共圏、という読書人を酔わせる構図を採用し、あえて批判的意見さえも採用する『図書』の戦略性を見ていくことになるが、そんな『図書』であっても時代の流れ翻弄されていくという流れになっている。岩波書店の栄華盛衰を岩波書店で、岩波書店にもけっこう刺ある批判をする著者が行うという構図であるが、著者と岩波書店の異なる思惑を類推できてそこも面白い。2015/12/02

Yonowaaru

1
本書は岩波書店の精神を表すとも言える「図書」を扱い、それでもって岩波書店や「岩波文化」を考察した者である。世代も違えば国も違うけれど、あまり考えなしに購入したこの本は、面白い話の宝箱のように、佐藤先生に教えてもらいながら自分で考えながら読む感覚で読み、実際一度でいいから氏の授業を受けたい気持ちにさせてくれた。清水幾太郎、梅棹忠雄、鶴見俊輔など今の研究室に入ってから知った戦後の日本の出版文化・学術文化を支えた巨匠らの姿も垣間見えて歴史やメディア、PRや文学、本当に多面的な研究で読みなおしたい欲もいずれあろう2020/08/08

jinxixiuwen

0
岩波書店のPR誌『図書』を通して、同社が体現した教養主義いわゆる「岩波文化」の軌跡をたどる。60年代までは岩波文化を代表する大学人たちの相互の思想を超えた知的な言説空間を形成していたが、70年代以降は学問の細分化により大学からも『図書』からもこうした知的エリートの公共圏は見えなくなる。以後も、学生が中心であった読者層の高齢化や教養メディアの多様化に取組む姿が客観的に記述される。 私も高校入学直前からの50年に渡る定期購読者であり、引用される記事を懐かしく思い出しながら、著者の整理・分析を面白く読めた。2016/02/07

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