出版社内容情報
人びとの目から覆い隠されてきた戦争の本質を明らかにし、反暴力・反戦争の思想を紡ぎだす。
内容説明
戦争は人間を傷つける―。戦争は、「正戦」や「自衛」などの名目で人間の身体を破壊し、戦火の下で苦しみ、のたうちまわる人びとの姿を捨象する。9・11事件後の暴力の連鎖。「慰安婦」にされた女性たちの経験、立憲主義と平和主義を切り捨てようとする日本政府の姿勢などを踏まえて戦争の本質を論じ、傷つきやすい身体をもつ人間の具体的な生の経験から、反暴力・反戦争の思想を紡ぎだす。
目次
第1部(「テロとの戦争」との闘い;「慰安婦」問題と日本の民主化;修復的正義―「国民基金」が閉ざした未来;グローバルに正義を考える)
第2部(自由と平等をめぐるジェンダーの政治;立憲主義再考;歴史を冒涜する憲法「改正」論;普遍の原理と一人ひとりの“わたしたち”)
第3部(「安全保障」を問い直す;戦争に抗する―身体性/具体性から発する社会の構想へ)
著者等紹介
岡野八代[オカノヤヨ]
1967年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院政治学研究科修士課程修了。トロント大学大学院博士課程留学後、大阪市立大学大学院法学研究科博士課程退学。2010年早稲田大学にて博士号(政治学)取得。現在、同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。専攻はフェミニズム理論、政治思想、京都96条の会代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
30
エイジェンシー:社会規範や文化によって つねにすでに(傍点) 構成された主体が、その規範に応えながら行為を反復するたびに、規範の呼びかけとそれを聞き取る主体のあいだを媒介する(17頁)。慰安婦問題で、被害者にとって和解とは、慰安所を作るような世界の事実が理解され、その理解に基づき、世界を変革し、女性を性奴隷・性の道具として扱い、人間性を奪うような社会が否定されることから始まる(74頁)。2016/03/04
ゆう。
29
フェミニストによる、反戦争・平和論だと思います。9・11以降のアメリカで、多くのフェミニストがアメリカのテロとの戦争に無批判になるなかで、本当のフェミニストであれば暴力の連鎖にたいして批判的でなければならないという著者の思いが強く伝わってきました。また慰安婦問題や安倍政治による集団的自衛権を認め立憲主義を不定する政治に対しても、ケアの倫理・規範からも許されないことだと思いました。そして傍観者でいることは暴力的であることだという趣旨の指摘は、とても重いものがあると思いました。2016/11/10
イボンヌ
7
岡野先生の強烈な自民党批判と安倍政権批判だと私には感じました。 引用も多く、参考文献も沢山掲載されています。2020/11/23
Masataka Sakai
2
知識が人を堕落させるよい例の本 拓郎の歌を思い出した2016/01/06
mamei
1
第9章が一番、ケアの倫理と関わっていたように思う。2022/03/15