内容説明
日本の人類史でもっとも古く、長く、そして謎の多い旧石器時代。何万年もの間、人々はいかに暮らしていたのか。えっ、カニですか…!?ウナギを釣り、貝のビーズでおしゃれして、旬のカニをたらふく食べる。沖縄の洞窟遺跡の膨大な遺物から見えてきた、旧石器人のなんとも優雅な生活を、見てきたかのようにいきいきと描く。
目次
1 むかしばなしの始まり―人類誕生、そしてヒトは沖縄へ
2 洞窟を掘る―沖縄に旧石器人を求めて
3 カニとウナギと釣り針と―旧石器人が残したもの
4 違いのわかる旧石器人―「旬」の食材を召し上がれ
5 消えたリュウキュウジカの謎
6 むかしばなしはまだ続く
著者等紹介
藤田祐樹[フジタマサキ]
1974年生まれ。2003年に東京大学大学院理学系研究科博士課程を修了。博士(理学)。同大学院農学生命科学研究科研究員、沖縄県立博物館・美術館人類学担当学芸員を経て、2017年より国立科学博物館人類研究部に勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鯖
32
タイトルが出落ち。掘っても掘ってもカニしか出てこない洞窟で何年も発掘作業を重ねた著者の奮闘記。時折差し込まれる小芝居が著者の優しい人柄を偲ばせる。世界最古の貝殻製の釣り針。旬の秋にのみ身の詰まったモクズガニを味わう旧石器人たち。島の暮らしにあわせて小型化し、鹿としては稀な26年の長寿を誇るリュウキュウジカが湊川人がグレートジャーニーの果てに沖縄に辿り着いてから6000年で絶滅した話。けれども湊川人の血は現在の沖縄の人々にも縄文人にも流れていないらしい。読後感が川原泉の漫画みたいで、切なくも楽しかった。2020/02/09
トムトム
30
研究職は大変です。洞窟探検家のエピソードだけでも、一冊書けるんじゃないかしら。知識が増えると先入観も増えてしまう。竹ひごでカリカリと黙々とひたすら発掘という心が無になる作業をしてアイデアをひらめいた時、気持ちよかったと思います。だから研究職はやめられない!面白い本でした。2020/12/26
サアベドラ
28
沖縄本島南部の洞窟遺跡の発掘調査を通して、復元された当地の旧石器人の生活(特に食生活)を分かりやすく紹介した本。2019年刊。旧石器人というとマンモスとかシカとか食べてるイメージがあるが、当地ではどうもカニとカワニナ(巻貝)を大量に食べていたらしく、しかもカニはわざわざ旬の秋を狙って捕まえていたという。遠い昔の、それも縄文時代よりさらに前の時代の人が何を食べていたかなんて、冷静に考えるとあまり興味の湧かないテーマかもしれないが、著者がすごく楽しそうに書いているので読んでいるこっちも楽しくなってくる不思議。2019/11/04
tom
22
読友さんに教えてもらう。そうなのか、大昔、3万年も昔の旧石器時代に沖縄に住んでいた人たちは、カニがうまくなる季節になるとカニを喰いに行っていたのだ。これを明らかにするために著者は狙った土地を掘りまくり、堆積物を取り出してコレクション、精密に分類する。大量の時間と体力を使って、その土地で何が起きたていたかを研究する学者の語りの本。著者は、自分の語りを「旧石器人のなんとも優雅な生活を、見てきたようにいきいきと描く」と述べて楽しんでいる。なかなかよろしい雰囲気がこの本にはある。2025/05/28
翠埜もぐら
20
沖縄の旧石器人の生活痕が残るサキタリ洞の発掘と、発掘品から考察・想像・妄想するお話。旧石器時代と言うのに石器がほとんど出土しないって、どうやって生活してたんだと思ったらどうやら貝殻を加工していたらしいと。でも今の考古学は遺物の表面の微細な傷まで調べるのね。いろいろ苦労もあるだろうに著者の「発掘って楽しい!」と、ぎりぎり許されるのかっと言う妄想があふれる楽しい本です。2019年刊行でほぼ最新情報。まだ発掘途中のようなので続編が楽しみです。出るよね岩波書店さん、続編。2022/07/28