出版社内容情報
面積というアイデアは,ナイルの氾濫で失われた耕地の測量からはじまり,世界各地で労働時間や収穫量,長さを単位とするさまざまな測定法が発明された.やがて抽象的な面積概念が発達し論証図形学が誕生する.体積,仕事量,曲線の長さなどの諸量も積分によって求めることが可能になった.面積が数学になるまでの過程をたどる.
内容説明
ナイルの氾濫で失われた耕地を測量するために、人類は面積の存在に気づいた。はじめは「縦×横」ではなく、労働時間や収穫量が基準となった。やがて抽象的な面積概念が発達し、論証図形学が誕生する。体積、仕事量、曲線の長さなども積分によって求めることが可能になった。面積が数学になるまでの過程をたどる。
目次
第1章 度量衡の誕生(バビロニア;エジプト ほか)
第2章 面積の発見(面積とは;労働で測られた面積 ほか)
第3章 面積の展開(『九章算術』をよむ;三平方の定理 ほか)
第4章 面積概念の発展(一般曲線の囲む面積;区分求積法 ほか)
著者等紹介
武藤徹[ムトウトオル]
1925年、神戸市生まれ。1947年、東京帝國大学理学部数学科卒業。1947年、東京都立第四中学校(現都立戸山高等学校)に赴任。NHK教育テレビ「高校数学講座」初代講師。1986年、都立戸山高等学校定年退職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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calaf
6
難しい...というか、話はほとんど数学ではなく歴史だし、数学の部分も省略が多過ぎてなかなか内容を追えないし...ちょっと私的には中途半端な本という印象でした。2013/01/24
kenitirokikuti
5
図書館にて▲本邦の度量衡の度、長短をはかるものについて。漢書には分寸尺丈引とある。1引は10丈。「引」には棺を載せた車を引く綱なる意味がある。その長さか? 引という度は魏の時代から未使用となるため、唐に倣った大宝律令には引はない。それ以前、十握の剣、八咫の鏡(咫あた、尺さか、は尺取り虫の指の形。親指と中指をいっぱいに伸ばす)など。古代に三咫余り一握とか五尋余り四咫といった数えはない。古事記には身長が九尺二寸半という記述。2022/08/02
paluko
5
手を動かしてちゃんと追っていけばたぶん私にでも全部わかる本。数学はただ「役に立つ」どころか人類の切実な必要から発生してきたことがよくわかる。面積=縦×横 にたどり着くまでには長い道のりがあった。というか「長方形の面積は、縦の長さと横の長さの積として求められる」という定理は大学で証明するのね(123頁)。数学からは外れるが、62頁に紹介されているペリクレスの言葉「貧困を恥ずかしいとは思わないが、貧困をなくす努力を怠ることは恥ずべきことと思う」カコイイ。2021/09/30
海星梨
4
三章と四章は数式の羅列で、解説ですらないので読まなくてよいです。歴史の話も不十分です。当時の銀価格を現在の銀価格に言い換えても無効にすぎ、眉をひそめて読み進めましたが、文章が上手いとは言えない著者だなという印象でした。二章までは、それぞれの地域ごとの事実羅列ですが、読んで得られないものがないというわけではないと思います。面積といえば縦横かけるあれですが、昔はある時間内に耕せる範囲を1という労働力で測ったり、どれだけとれたという収穫量で測る、という長さに依存しない方法があった、というのは勉強になりました。2019/02/24
那由田 忠
4
優秀な数学教育の専門家らしいが、分からない人に語る姿勢ではない。面先は縦×横が発見されるまでの歴史を書こうとしたのか。私にはどこに書かれていたのか発見できなかった。第2章面積の発見にあるべきだが、くどくどと単位の話が書いてあるだけ、と見えるだろう。たぶん歴史の話をていねいに膨らませると面白そうな気配があるものの、そのまま「面積の展開」に入って、理解不能となってゆく。 面積そのものと、面積の測定値の区別を理解したことが著者の学問の出発点だったようだが、残念ながら読者と共有できる本が書けなかった。2014/10/18