出版社内容情報
アテネとエルサレム――人間理性と神の啓示を象徴する2つの都市のはざまで,近代ヨーロッパ思想史とは異なる系譜をたどったドイツ・ユダヤ思想.ニーチェ―ブルクハルト―ブーバー―ショーレム―コーエン―スピノザ―ローゼンツヴァイク―シュトラウスらの系譜から理性・啓示・アイデンティティをめぐる葛藤とその遺産をたどる.
内容説明
アテネとエルサレム―人間理性と神の啓示を象徴する二つの都市のはざまで、近代ヨーロッパ思想史とは異なる道をたどったドイツ・ユダヤ思想。スピノザ、ニーチェ、ブルクハルトが用意した舞台のうえで、コーエン、ブーバー、ローゼンツヴァイク、シュトラウス、ショーレムたちの系譜が照らし出される。
目次
序章 二つの偉大な都市―アテネとエルサレム
第1章 ぎこちない握手―ニーチェ的ユダヤ・ルネサンス
第2章 欺瞞と意地―覚醒するユダヤ性
第3章 老哲学者の面目―前線に出るコーエン
第4章 裏切り者のゆくえ―彷徨うスピノザ
第5章 教育による救済―ユダヤ的知のネットワーク
第6章 宗教か法か―ユダヤ教の宗教哲学をめぐる解釈論争
終章 二つの偉大な廃墟―理性の天使と歴史の天使
著者等紹介
佐藤貴史[サトウタカシ]
1976年北海道生まれ、国士舘大学政経学部二部政治学科卒業、聖学院大学大学院アメリカ・ヨーロッパ文化学研究科博士後期課程修了。博士(学術)。現在、北海学園大学人文学部准教授。思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さえきかずひこ
11
古代から続いたユダヤ教哲学のなかに生きたヘルマン・コーエンとマルティン・ブーバー、またユリウス・グットマンとレオ・シュトラウスの思想的論争を考察することをとおして、20世紀前半のドイツ・ユダヤ社会における哲学と信仰の関係、形而上学と実存の関係、アテネ(普遍)とエルサレム(個別)の関係など多面的な視座から、その時代に神を信じることの困難さに向き合った人々の精神の営みを深い闇のうちに浮かび上がらせる良書。スピノザやフランツ・ローゼンツヴァイクについて論じられている章も刺激に満ちておりとても興味深く読んだ。2020/03/26
左手爆弾
0
アテネ(哲学/ギリシア的なもの)とエルサレム(宗教/ユダヤ的なもの)との間で揺れる、20世紀前半までのドイツユダヤ思想の一連の動き。彼らは国籍と民族性の間での揺れ動き、自らのアイデンティティに向かう。意外にも彼らはニーチェの影響などを受けており、また、ローゼンツヴァイクは早い段階で世俗からの撤退を主張するなど、その内実は様々。最終的に、対話は「待つ」ことと共にあってこそ実現するという、ユダヤ思想の一幕が示される。2015/06/15