岩波現代全書<br> 環境の経済史―森林・市場・国家

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岩波現代全書
環境の経済史―森林・市場・国家

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  • サイズ B6判/ページ数 200p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784000291330
  • NDC分類 519.2
  • Cコード C0333

内容説明

人類の歴史は自然からの制約によって形づくられてきただけではなく、自然を変える行為の積み重ねでもあり、その自然改変の結果がさらに社会に影響を及ぼすという、相互作用の帰結であった。人類史が人びとの頭数の増加の歴史であるならば、人口増加とともに森林面積は減少する。それどころか乱伐にいたった時代も何度かあった。しかしなぜその減少が必ずしも「森林崩壊」には直結しなかったのか。日本列島は、先進国では珍しく緑豊かで三分の二は森林に覆われている。その日本列島を対象に、国家の営為と市場の役割に焦点を合わせ、いかに森林は保全されてきたのかを解き明かす比較環境史の試み。

目次

第1章 環境史へのアプローチ(自然改変;環境保全と近代;『文明崩壊』;日本は特殊か;比較事例分析)
第2章 歴史統計から(世界の森林被覆とその推移;諸大陸、諸地域によって異なる趨勢;「大分岐」;人口と森林伐採―四つの事例;小括)
第3章 徳川日本の歴史的位置(生態環境の危機;危機への対応;荒廃の原因;市場経済の二面性;二つの主体、二つの対応)
第4章 市場の機能―比較1(徳川日本の林産物市場;伝統中国の林産物市場)
第5章 国家の役割―比較2(森林保全における近世国家;ドイツと明治林政;結論)

著者等紹介

斎藤修[サイトウオサム]
1946年疎開先の埼玉県秩父生まれ。68年慶應義塾大学経済学部卒、同大学経済学部助手、一橋大学経済研究所教授等を経て2009年より一橋大学名誉教授。専攻は経済史、歴史人口学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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壱萬参仟縁

13
2009年ノーベル経済学賞のE・オストロムは、特定の環境資源に利害ある当事者同士が自主的に適切なルールを決め、適切な執行すること、自主統治で保全管理が可能で、共有資源をコモンズとして維持・管理する場合(27頁)。美林は秋田藩、尾張藩の木曽谷、弘前、盛岡の各藩、天領の飛彈や伊那も(98頁)。森林の管理と保全という発想は、17C森林乱伐が起きたことへの対応として登場(142頁)。わたしはどうしても管理教育という管理 のネガな意味が嫌で、管理の上から目線には反発を感じてきた。 2014/09/27

sk

4
市場経済と国家が森林の育成・破壊に果たす役割についてのケーススタディ。面白い。2019/12/28

千日紅

4
著者は専業の環境史家ではなく、「経済学と人口学の知見と方法論を活かした実証や解釈を好む歴史家(ⅳ頁)」である。そのことからも、本書の売りは細部に踏み込んだ叙述というより、新たな分析視角に基づいた解釈にあると思う。人口増加とともに、森林面積は減少する。しかし、その減少がつねに森林崩壊につながったわけではない。本書の目的は、森林の「崩壊へといたらしめなかった要因、結果としては森林保全につながった歴史上の動きのなかで、経済活動に直接かかわる事象と問題領域を取りあげて検討する(4頁)」ことである。2014/06/30

井上岳一

3
江戸時代が環境調和型の社会だったという通説に,痛烈に異を唱える。そんなに領主や幕府は偉くはなかった。結局,森林破壊による社会の崩壊を避けたのは,地域の多様な取り組みだったという結論。だから「政府の地道で真摯な努力には万歳二唱を,そして万歳三唱は多様な取組をしている地域の人たちに」で本書を締めくくる。こういう真摯な研究の書はいいね。地味な本だけど。なんか感動した。2015/02/05

コカブ

2
「江戸時代の日本は一時乱伐で森林が荒廃したが、政府が保護政策を行って回復した」という言説がある。他国の状況等を比較して、これを分析した本。まず世界的な傾向として、森林伐採は近代以降に拡大した。欧州では19世紀に森林伐採が大幅に減少する一方、他地域ではこの頃から拡大している。江戸時代もこの傾向に沿って伐採が拡大したが、中期からは歯止めがかかった。一般には政府(幕府)の政策のためとされているが、実は地域住民にも利益になる政策(年季山・部分山)や、育成林業の興隆(木材が売れる事への農民の対応)が原因だという。2014/08/10

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