岩波現代全書
スターリニズムの経験―市民の手紙・日記・回想録から

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 224p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784000291248
  • NDC分類 238.07
  • Cコード C0322

内容説明

大規模なテロル(粛清)が社会全体を覆った当時のソ連邦は、個人が紐帯を失ってばらばらにされた全体主義社会だったのだろうか。そうした国家のなかで人々はどのような自己形成や自己変容を経験するのか。本書は、スターリン時代以降のソ連市民が残した手紙や日記などの私的文書をもとに、抑圧的な体制に生まれ育った個人が、友人・家族などの親密な人々との交流を支えとして、精神的な「脱出」や権力への異議申し立てを行う姿を描く。個人の記憶と歴史とをつなぐ経験史を、未来への希望へと拡げる試み。

目次

第1章 建設と抑圧の時代を生きる―一九三〇年代の若者の日記(自立した女性として―オシャーニナの日記;本当の自分をもとめて―カターエフの日記 ほか)
第2章 試練に立つ家族―大テロル下の権力への手紙/家族の手紙(父と子の相克;囚人と残された家族をつなぐもの ほか)
第3章 書き紡がれる友情の世界―共同日記にみる親密圏と公共圏(コミューンの生活を記して―一九三五‐三七年の共同日記;よみがえる友情と共同日記―一九五六年以後の展開 ほか)
第4章 自己と体制の晩年を生きて―ソヴィエト市民の「自分史」(自分史を書く市民―回想録執筆にみる主体性;家族と私を記憶にとどめて―ソボレヴァの家族三部作 ほか)

著者等紹介

松井康浩[マツイヤスヒロ]
1960年生。九州大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(法学)。政治社会史、国際関係論。現在、九州大学大学院比較社会文化研究院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Ex libris 毒餃子

5
日記や手紙から社会情勢を分析する手法は興味深い。2015/12/27

Toska

3
日記や手紙、自伝などの史料を駆使し、スターリン時代を生きた人々の主体を浮かび上がらせた労作。サンプルが少なく、また著者の構想に従い取捨選択されており、決して一般庶民の生活を広く再現するという類のものではない。それでも、あの厳しい時代の中で驚くほど多様だった人々の個性、そして人間関係が活写されている。ルームメイトとなった女学生たちの交換日記を通じた絆は感動的。親密圏・プロト公共圏といった分析概念も興味深い。2021/11/15

Rick‘s cafe

1
粛清などによって暗黒の時代の印象が強いスターリン体制。果たしてそこで暮らす人々は、同じような考えや気持ち、経験を積んできたのか。日記や回想録、「権力への手紙」などのソヴィエト市民たちの手によるライフストーリーを通して、パーソナルナラティブを探る。決して膨大な数の人々の記録を抽出しているわけではないが、如何にスターリニズムの経験が、記した人の家庭環境や置かれていた状況によって多様であったかを描くのに充分なライフストーリー文書が引用されている。「われら」の世界における「わたし」を掬い上げる素晴らしい研究書。2020/09/03

みち

0
ソビエトの社会体制下、市民が残した日記・手紙を読む。何人かの日記・手紙を紹介しているけれど、その何人かでソビエトを語れるのか?全体の考察とかにたどりつかない、ただの紹介になっている。2014/07/08

ゆげ

0
大粛清当時のソ連を少し変わった視点で分析している本です。個人の日記を研究することで、当時の人々の生き様が鮮明に描かれています。至極当然のことですが、あの社会の下でも自己実現を果たした人や仲間との信頼関係を保ち続けた人もいる、ということに改めて気付かされました。このような日記による歴史学研究には主観が入り込みがちではないかという疑念もありますが、当時の社会環境や人々の生き方を知るには(特にソ連のような閉鎖社会においては、)非常に効果的な手法ではないかと思います。日記研究の進展にはとても期待できます。2018/06/30

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/7981527
  • ご注意事項

最近チェックした商品