内容説明
大規模なテロル(粛清)が社会全体を覆った当時のソ連邦は、個人が紐帯を失ってばらばらにされた全体主義社会だったのだろうか。そうした国家のなかで人々はどのような自己形成や自己変容を経験するのか。本書は、スターリン時代以降のソ連市民が残した手紙や日記などの私的文書をもとに、抑圧的な体制に生まれ育った個人が、友人・家族などの親密な人々との交流を支えとして、精神的な「脱出」や権力への異議申し立てを行う姿を描く。個人の記憶と歴史とをつなぐ経験史を、未来への希望へと拡げる試み。
目次
第1章 建設と抑圧の時代を生きる―一九三〇年代の若者の日記(自立した女性として―オシャーニナの日記;本当の自分をもとめて―カターエフの日記 ほか)
第2章 試練に立つ家族―大テロル下の権力への手紙/家族の手紙(父と子の相克;囚人と残された家族をつなぐもの ほか)
第3章 書き紡がれる友情の世界―共同日記にみる親密圏と公共圏(コミューンの生活を記して―一九三五‐三七年の共同日記;よみがえる友情と共同日記―一九五六年以後の展開 ほか)
第4章 自己と体制の晩年を生きて―ソヴィエト市民の「自分史」(自分史を書く市民―回想録執筆にみる主体性;家族と私を記憶にとどめて―ソボレヴァの家族三部作 ほか)
著者等紹介
松井康浩[マツイヤスヒロ]
1960年生。九州大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(法学)。政治社会史、国際関係論。現在、九州大学大学院比較社会文化研究院教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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