内容説明
「哲学的背景を持たない医学は単なる小手先の手技に陥り、医学的実技を伴わない哲学は空虚な理論に走ってしまう」。古代中国では一つであった医学と哲学。まずこの原点を春秋・戦国時代に遡って明らかにし、次いで中国医学から発しその後独自の発展をとげた日本漢方の名医たち―吉益東洞と中神琴渓―の治療法と思想をふり返る。そしていま一度、医学を“医学哲学”として捉え直すことで、現代医療の諸問題を考える試み。
目次
1 中国医学(思想的背景としての老子の思想;『呂氏春秋』に見る中国医学の淵源;形而上学としての医学―易哲学と“医者意也”を巡って)
2 日本漢方(吉益東洞の“毒を以て毒を制す”医学;中神琴渓の“規則を離れ”た医学)
著者等紹介
舘野正美[タテノマサミ]
1954年生まれ。日本大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。医学博士。専攻は、中国哲学、東洋医学、医学哲学。現在、日本大学文理学部教授、東亜医学協会理事、日本フットボール学会理事、国士舘大学アメリカンフットボール部コーチ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
16
『呂氏春秋』「尽数篇」の医学思想は、〝予防医学〟的な養生思想の主張。 古代中国において、医学と哲学は、 円かに円融(35頁)。 <医者真也>という医術の真髄は、 〝極意〟にあり、これを体得しなければ 正しい医術は行使できないが、 そのためには修行・鍛錬が必要(55と66頁)。 ドクターもトレーニングが必要とのこと。 三大古典は、『黄帝内経(こうていだいけい)』、 『傷寒論』、『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』 (219頁)。 2014/09/27
井の中の蛙
8
難しかったので、特に後半は流し読み。それでも、中国哲学のパラダイムの中に〈気〉という捉えにくい概念を見たり、易が単なる占い以上のものであり、中国哲学の底辺を支える1つであることが分かった。根底にある老荘思想も知ることができた。2024/01/25
hiroshi0083
0
「現在の医療体制では、漢方医学が小手先の知識で使われている」と警鐘を鳴らす著者が、その漢方医学成立の流れを、「老子哲学→『道』の体現のための修行→修行で『極意』に目覚めた聖人が、相談者に対してどのようにすべきか指し示す」とする。その流れにおける修行には身体的な一面があり、そこで得た『極意』を医学の世界に当てはめると、薬剤の処方(中国医学=中国漢方)となる。 つまり、中国哲学と中国医学は表裏一体であり、お互いを理解しなければ正しい使い方は出来ないと結論づける。2014/04/11
-
- 和書
- 保険業界 教育社新書