内容説明
20世紀初頭から、東京・大阪・上海・ソウル・台北・台南・香港などでは、歌曲や音楽人が国境を跨いで交流し、日本を中心とする「帝国圏」と中国を中心とする「華語圏」とがせめぎあいながらも、ヒットする流行歌に人びとは共感していた。ダンス・映画・ジャズなどからの影響を受けながらうごめく、東アジア・ポピュラー音楽の栄枯盛衰を、資本・技術・人物・メディアの動きを通してたどる。
目次
序章 「帝国圏」と「華語圏」の流行歌
第1章 東西音楽の融合―ダンス音楽とレコード歌謡の幕開け
第2章 ラジオとトーキー映画―抵抗と啓蒙から生まれた流行歌
第3章 一九三〇年代―東アジアにおける流行歌の時代
第4章 戦争と流行歌―「軍歌」「戦時歌謡」vs.ジャズソング
第5章 戦争の残影―戦後直後の流行歌の光と影
第6章 植民地と革命の継続―香港と中国
終章 「歌」の解放?それとも分断?
著者等紹介
貴志俊彦[キシトシヒコ]
1959年、兵庫県生まれ。広島大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得満期退学。現在、京都大学地域研究統合情報センター教授、日本学術会議連携会員。専門は、東アジア近現代史研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
30
1世紀にわたる「流行歌」の東アジア全体を見渡した歴史。戦前の流行歌で、どう聴いても演歌ではない曲のルーツは何なのか、を考えれば、ジャズに行き着く。ジャズを共通項として、各国での流行歌が音楽的にも、人的にも見事に結びついていくのは壮観でさえある。何より忘れてはならないのは、音楽としての自由な発展を願いながら、つねに政治の動向に翻弄され、時には迫害されてきた歴史。要約できないほどのエピソードがここには紹介されている。J-POPの時代となって「流行歌」は消えても、言語を越える音楽の相互影響はおそらく続くだろう。2015/05/18
qoop
4
主に1930年代から東アジア各国で唄われた〈流行歌〉。植民地支配/被支配の関係の中で相互に影響しあいつつ、いわば歪みながら開いた花が第二次大戦によって大きく分枝し、一方では野放図に育ちすぎて新興勢力に取って代わられ、他方では新体制の権力争いに巻き込まれ弾圧されていく。スケールを東アジアと大きく取ることで、庶民に好まれる歌が如何に時代によって規定されているのかがよりよく理解できる。まさしく流行歌は時代の徒花なのだろうが、歌の同時代性というものは、時代の歪みや軋みの表現だと云えるのかもしれない。2015/08/14
敬介
4
今を遡ること100年のスパンで東アジアの流行歌を論じるというテーマがすごく新鮮でした。是非、音源や映像付きでこの本の世界を体験したいものです。音源を伝えるメディアの変遷の歴史でもあったと感じました。100年前のSPからネットダウンロードになりこの先100年どうなるのかな。2013/11/07
てまり
3
アジアと流行歌といえば日本からの影響が語られがちだが、逆に輸入したパターンもかなりあることを知った。アリランとか民族的なものの話がやっぱ興味深いが、ジャズの受容の差もおもしろい。戦前の朝鮮に対する興味と親しみ、戦後の中国大陸への懐かしさが、なんだか胸がキュンとくるところがある(手放しで賛同できるものではないが)。なぜか表記が日本語とふつうの漢字だけなので検索してさっと聴けなくて、そこは不便。アルファベットすらほぼないなはなぜ……。今の出版ならハングル表記はありそう。2025/02/06
takao
1
☆戦前から2017/06/29
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