内容説明
なぜ日本ではこんなにも痛税感が強いのか?歪みきった財政制度を立て直す道筋を示す―
目次
第1章 租税抵抗の財政学に向けて(小さな政府と強い租税抵抗;日本型生活保障の臨界点;租税抵抗に向き合い、財政への信頼を作る)
第2章 租税抵抗の歴史的文脈(租税抵抗はなぜ生じるか;日本型負担配分の論理;社会福祉への受益者負担論の侵入)
第3章 再分配機能を喪失していく日本の租税構造(減税政策による所得税の財源調達力の喪失;貧困化を促進する負担構造;租税体系における所得税の役割)
第4章 財政への信頼をいかに構築するか―国際比較からのアプローチ(福祉国家の危機と租税抵抗の高まり;イギリスにおける租税抵抗;スウェーデンにおける租税抵抗)
第5章 人々を排除しない普遍的な財政制度へ(人々のニーズを充足する普遍的な財政制度;普遍的な社会保障制度の財源構造)
著者等紹介
佐藤滋[サトウシゲル]
1981年生まれ。横浜国立大学大学院修了。博士(経済学)。現在、東北学院大学経済学部共生社会経済学科准教授。専門は財政学・イギリス財政史
古市将人[フルイチマサト]
1983年生まれ。横浜国立大学大学院修了。博士(経済学)。現在、帝京大学経済学部経済学科講師。専門は財政学・地方財政論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
24
若手研究者による生存と尊厳(カバー見返し)のための財政学再構築を試みる好著。租税抵抗:社会統治原理との関係で用いる。財政社会学的考察を展開(ⅶ頁)。消費税増税分が社会保障以外に公共事業にも使いうるものになってしまった(11頁)のは大問題。それで10%以上を強いてくるのは行財政改革の怠慢でしかないと痛罵せねばなるまい。不完全就業者を含める広義の失業率は10%以上の高失業社会日本(29頁~)。全員にマイナンバーICカード配るのなら、ハロワカードもなぜ不完全就業者に配ろうとしない? 2015/05/08
Kazuo
3
日本は世界で最も租税負担が小さい国の一つであるにも関わらず、痛税感は 非常に高い。租税への忌避、すなわち租税抵抗の強い国なのである。日本政府も先進国の標準型である福祉国家を継続し続けるために、様々な施策を実施したが、財務官僚と政治家の「人間」への洞察が不足していたため、国民の「共同の困難」に対応した『普遍主義的』な社会保障制度を整備していくことに失敗した。財政に受益者負担理論の導入を行い、国家は社会連帯から手を引いた。政府が国民から信頼されなねらば国民は納税しようとは思わない。投票しているのは我々である。2015/02/28
のら
2
良書。税負担が「小さい」にも関わらず税への抵抗が強く、結果社会保障の「私」化が進む日本の現状を明らかにする。筆者らは所得増税を行ったうえで社会保障の普遍化を主張する。岩波だしこのタイトルだしでいかにも難しそうだけど、表やグラフも多く読みにくさは無い。自助を前面に出した菅内閣が誕生した今だからこそ、もう一つの選択肢として本書の内容は参考になる。今年読んだ本の中では『女性のいない民主主義』と同じくらいかなり面白かった。お薦め。2020/09/24
鈴木
2
社会保険中心型の日本の生活保障制度は臨界点を迎えているが、租税抵抗を恐れるが故に増税が出来ず、消費税への痛税感を抑えるが為に減税や公共投資を繰り返した結果、財政赤字を悪戯に膨らませた。しかしながら痛税感は税額の多寡ではなく、得られる公共サービスに比例する。即ち、国民にきちんと再分配を行うことが大切である。 日本は、全世代全社会階層を分断することのない包摂的な税体系を作り上げなければならない。 みたいな内容の本。2019/09/14
jntdsn13
1
財政改善に向けた「租税抵抗」の対抗策を検討する本。税とその使い道に対して信頼を取り戻すことが最短の道なのだといった趣旨だが、人口動態などの問題もあり、官僚含めてみんなそんな余裕がないから厳しいところをせせこましくやっているのであって、プロパガンダをガンガン流すとかでなければそれは夢物語ではと感想を抱いた。2023/06/05