出版社内容情報
中絶は,殺人罪か,基本的人権か.1973年の連邦最高裁による中絶合法化は,アメリカを現在まで続く泥沼の「中絶戦争」に引きずり込んだ.なぜ,もっとも個人的な出来事が,大統領選を左右し,国内を二分する熾烈な対立を生むのか.アメリカ現代政治を見るうえで欠かすことの
内容説明
中絶は、殺人か、女性の基本的人権か。一九七三年の連邦最高裁による中絶合法化は、アメリカを現在まで続く泥沼の「中絶戦争」に引きずり込んだ。なぜ、もっとも個人的な出来事が、大統領選を左右し、国内を二分する熾烈な対立を生むのか。アメリカ現代政治を見るうえで欠かすことのできない中絶論争についての初の網羅的研究。
目次
第1章 歴史的背景
第2章 ロウ判決と中絶の合法化
第3章 中絶をめぐる「内戦」
第4章 フェミニズムと女性観の相克
第5章 「生命」と「選択」のディスコース
第6章 論争打開への模索
著者等紹介
荻野美穂[オギノミホ]
1945年生まれ。奈良女子大学大学院人間文化研究科博士課程中退。人文科学博士。奈良女子大学、京都文教大学、大阪大学を経て、同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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マイケル
10
中絶は殺人か女性の基本的人権か米国の泥沼の中絶戦争について反対派と擁護派の意見を紹介し考えさせられる。宗教家や政治家を巻き込んでの大論争。フェミニズムによる権利主張には違和感、しかし、命が大切というプロライフ活動家の中絶妨害の過激化や医師射殺事件まで行くと、本当に命を大切に思っているのか疑問。胎児どころか新生児の命にも価値を置かないパーソン論。男女平等で女性徴兵制? どこからが人間かという問題、障害理由の中絶と優生思想の関係。両派とも中産階級以上の白人女性が中心。日本の水子供養や青い芝の会についても紹介。2020/12/26
若葉
0
ロウ対ウェイドが覆された今すごくタイムリーな本。アメリカにおいて中絶問題はあくまで法的な領域によって争われてきたこと、「権利」や「個人」といった西洋近代概念と強固に結び付けられ、両陣営がその概念を利用し論理展開をしているために膠着状態に陥っている点が指摘されている。また、権利ベースでの議論がなされてきたため母体の権利と胎児の権利がゼロサムとして捉えられ、そのどちらに重きを置くかという不毛な対立が続いていることもアメリカにおける論争の特徴であるという。2022/06/28