内容説明
国や企業にアイヌの広大な土地が奪われ、沙流川の聖域がダムに破壊される危機に立たされたとき、アイヌ・貝澤正は湖底の人柱となる決意を胸に逝った。近代のアイヌ史を研究し、国にアイヌ新法の制定を訴え、自然林の保護運動に立ちあがり、先住民との交流を求めて世界を旅し、生活の自立を目指して農林業に励んだ氏が、生涯に渉って綴った生活と行動の記録。氏を悼んで萱野茂・本多勝一氏などが寄せた思い出を付す。解説は姫田忠義・民族文化映像研究所所長。没後の一九九七年、アイヌ文化振興法は公布された。
目次
1 わが人生(夕暮;老アイヌの歩んだ小道;我が家の歴史;母のこと;「旧土人学校」に学んで)
2 アイヌの復権(近世アイヌ史の断面;北海道ウタリ協会;北海道旧土人保護法;アイヌ民族の復権に生きる;アイヌに関する法律を求める理由)
3 世界をあるく・歴史をあるく(中国への旅;歴史をたずねて;沖縄・キムンウタリの碑の前で;平取町とヨーロッパ人の関係)
4 怒りを胸に(土人保護施設改正について;北海道収用委員会における貝澤正の申立;三井物産株式会社社長への訴え;私の想い―一アイヌの声)
5 大地に立つ(山への恩返し;私の川向いへの執念;自立への道のり)
貝澤正の世界(おのおのが信じた路;ウタリ協会の活動を共にして;教えられた事ども;失ってはならない、コタンの自然;「北海道アイヌ」への弔辞;非道;正さんから学んだこと ほか)
著者等紹介
貝澤正[カイザワタダシ]
1912年、北海道沙流郡平取村(現平取町)に生まれる。二風谷尋常小学校(旧土人学校)、平取尋常高等小学校高等科卒業。1941年、開拓団員として「満州」へ渡る。67年、平取町議会議員、71年、二風谷アイヌ文化資料館落成、初代館長となる。72年、北海道ウタリ協会副理事長に就任。74年、第1次アイヌ訪中団団長として中国訪問。以後、アラスカ、北欧、サハリン、ソ連等を訪れ、先住民と交流。87年、二風谷アイヌ語教室が開設され、運営委員長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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