内容説明
文明開化の洋風に乗って日本の若い男女に圧倒的な力を振るった「愛」。そして、「色」という近世日本人の性感覚・文化をしたたかに内に抱え込んで、この「愛」に直面し苦闘した近代作家たち。逍遙から二葉亭、紅葉、鴎外、漱石、また一葉ほか有名無名の女流作家たちの作品におけるこの葛藤の相を、日本の文化・歴史の中に育まれた多様な性愛観とともに提示し、その意味を計り直し、広い視野で論じる。著者の渾身の力が込められた力作にして、あたかも現代の性愛観のあり所をその掌の内に指した一冊。
目次
1 「色」から「ラブ」へ―坪内逍遙
2 「好色」から天婦愛へ―尾崎紅葉
3 「色」と「愛」の間で―二葉亭四迷
4 「恋愛」への憧れ―森鴎外
5 「ラブ」の挫折―二つの女学生小説
6 芸娼妓の復権―泉鏡花
7 愛でも救えぬ孤独―夏目漱石
8 「愛」への懐疑―女性作家たち
9 神話の崩壊―森田草平
著者等紹介
佐伯順子[サエキジュンコ]
1961年、東京都生まれ。学習院大学文学部史学科卒業、東京大学大学院比較文学比較文化専攻博士後期課程単位取得満期退学。学術博士。同志社大学大学院社会学研究科教授。比較文化史、ジェンダーと文学・メディア表象研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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