内容説明
「パンのための学問」と揶揄されることもある法律学を、その出自から掘り起こすと同時に、他の人文=社会諸学との関連のなかで捉え直すことを通じ、単なる資格取得や実用のための手段にとどまらない「制度的想像力の学」として提示する。グローバル化やリスク社会における新たな法秩序、社会改革の可能性を考える。
目次
1 法学はどのようにして生まれたか(なぜ法の歴史について学ぶ必要があるのか;西洋法の歴史)
2 生きられる空間を創る―法学はどんな意味で社会の役に立つのか(法に期待される役割と背景にある思想;活動促進と紛争解決―民事法の役割 ほか)
3 制度知の担い手となる―法学を学ぶ意味とは何か(法学を学ぶ意味とは?;法的思考のいくつかの特徴―哲学との対比 ほか)
4 法学はいかにして新たな現実を創り出すのか―法学と未来(法的思考で現実は変えられるか;難事案をどのように判断するか(一)―ドゥオーキンの構成的解釈 ほか)
5 法学を学ぶために何を読むべきか
著者等紹介
中山竜一[ナカヤマリュウイチ]
1964年生。京都大学大学院法学研究科博士課程中途退学。現在、大阪大学大学院法学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うえ
6
これも良書。「理性によって見出だされた法の体系を築き上げる、このような考え方…は近代的自然法論と呼ばれたり、神の支えを必要とせず、自然法則のように、理性の目で見出だすことのできる人間の自然法則という意味において、理性法論と呼ばれている…グロティウス、イギリスのホッブズ、フランスのドマ、そして、ドイツのプーフェンドルフ、トマジウス、ヴォルフらが有名である」「法律そのものに対して違憲判決が下された例は、09年6月時点で…わずか8件しか存在しない。これに対し…アメリカでは、非常に多くの違憲判決が下されている」2015/09/22
takizawa
2
法哲学者による法学入門。私は、予備校本を愛用する典型的受験生で、基礎法学はおろか実定法「学」からも遠ざかっているため、この手の本は立ち位置を修正するのに必要。なぜ法学部では講義と演習に分かれているのかを知り、法学の歴史の深さに感動。いかなるハードケースにおいても法原理から正しい解が導けるとするドゥオーキンと、正しい解など存在せず、法解釈では常に価値の選択を迫られているとするアンガーの論争が興味深い。2009/09/19
Bevel
1
法はそもそも正義(=公平)の実現のためにあるということを歴史的に見ていく議論が面白かった。活動促進や紛争解決はその前にではなく、その後にある。法学の基本は判例解釈の技法であって、「立法論」は学際的な応用研究のように見えていること、歴史的に構成される法の整合性が法の運用の重要な部分をなすこと、法を「道具」として見なす現在の「~基本法」がご都合主義的に見えていることなどが、参考になった。2021/01/27
148
1
講義の教科書でした。哲学とか歴史学とかそういう方面からのアプローチだったので法学といわれてもピンとこない私でも楽しんで読めました。2015/02/06
ぽん教授(非実在系)
1
京大系の基礎法の先生らしい(実際田中成明先生のお弟子さんみたいだし)深い内容。「法的な思考」とは何かを法の歴史や思想から丹念にひも解いていくその論理は、司法試験対策だけやってれば良い的なロースクール生がやりがちな姿勢を戒めてヒューマニティーズの名の通りリベラル・アーツの重要性をこれでもかと説得的に説く。2014/02/16