内容説明
哲学のフロントは、哲学が哲学ではないものと向かい合うその境界にある。哲学ではないものとは、科学でもあるだろうし、宗教でもあるだろう。しかし、哲学がもっとも鋭く対立するものは、一見すると哲学にみえる準‐哲学である。準‐哲学としてのアジア思想の側から、哲学とそのアクチュアリティを問い直す。
目次
1 哲学はどのように生まれたのか(哲学の始まり;中国哲学の始まり)
2 哲学と翻訳そして救済―哲学を学ぶ意味とは何か(翻訳の哲学;翻訳という概念 ほか)
3 哲学と政治―哲学は社会の役に立つのか(近代東アジアの哲学経験―西田幾多郎と新儒家;西田幾多郎の晩年性 ほか)
4 哲学の未来―哲学は今後何を問うべきなのか(奪われた声;被植民者の沈黙に言葉を返す ほか)
5 哲学を実践するために何を読むべきか
著者等紹介
中島隆博[ナカジマタカヒロ]
1964年生。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中国哲学専攻中途退学。現在、東京大学大学院総合文化研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ジュール リブレ
7
哲学…… 難しいものだ。 初めて触れる哲学が、この本、と言うのも厳しいのかも。 二回読んでも、まだ、入って来ない。さすが、考える学問…2011/09/28
非実在の構想
4
諸思想の解釈を繋ぎあわせたパッチワークによる自らの思想の表明みたくなっている。熊十力の唯識を内聖外王に結びつける話が面白い。2019/12/01
左手爆弾
4
ドゥルーズ=ガタリによる「哲学とは概念の創造である」を手がかりに、日本の西田幾多郎、中国の新儒家を再読。それは「翻訳」によって西洋のロゴスを手に入れようとする過程でもあり、西田においては中国の否定をも含んでいた。ただし、それは結局のところ自国の歴史と現実政治を肯定する否定政治学に行き着くという面もあった。概念が変更されることによって現実の問題への解決の道筋が見える。たとえば、パレスチナ問題の「解決」は何を意味するか、などは先に概念が創造されなければならない。つまらなくはないが、薄くて掘り下げ不足。2016/02/17
garyou
2
「ヒューマニティーズ 」というシリーズは人文学のこれからについて各分野の学者が執筆したものなのだろうと思う。薄くて一見入門書のようではあるけれど、「これから」を読むには読者の方にもある程度の知識が必要ということなんだろうな。いま読むと、「哲学とは何か」ということよりも、9.11以降「新しい戦争」と呼ばれたものが実は植民地戦争と変わらないという話にひかれてしまう。文献については詳しい説明があるのはちょっと嬉しい。2022/03/15
Masaki Saitou
1
題は「哲学」と銘打っているが、結局は日本の哲学学者における見解を他者の思考を引用して述べているような著書であったように感じる。確かに、これが著者の哲学的思考の作品である、というならば、この著書はその意味において十分であると思われる。しかしながら、この書は「哲学」についての説明、(目次通り)実用性とこれからの哲学について述べるべきである。ゆえに、終わりにで述べられている著者の見解をもっと押し出してほしかった。この書の複雑さは、著者が「哲学とは何かを考える時に孤独に思考するもので無い」と述べている結果かと思う2012/12/09