出版社内容情報
中国随一のロマン派の天才詩人は,漢人ではなかった?!――詩仙はなぜ,中国のほぼ全域を巡るほど旅の多い人生を送ったのか.酒に酔って月と戯れる愉快な李白像と,皇帝の寵臣から流謫の罪人へと転落した彼の人生は,どう結びつくのか.あまたある名作鑑賞からは一線を画し
内容説明
自らを「山人」と称する李白。ロマンチックな夢をかきたてる旅も詩作も、実は功名への野望と分ちがたく結びついていた。なぜ、中国のほぼ全域を巡るほど旅の多い人生を送ったのか。シルクロードの交易を担ったソグド人やバクトリア人の商人たちと、李白の出生地の関係に注目し、杜甫や高適など他の「山人」的な詩人たちとの交流のさまを窺いながら、その理由を探る。
目次
第1部 書物の旅路―出生から伝説化、そして詩集、注釈形成へ(李白の生涯と出生地―李白は中国人か?;同時代の評価と伝記;李白伝説の形成;戯曲・小説の中の李白;神になった李白;李白詩文集の出版;李白詩の注釈)
第2部 作品世界を読む―放浪と実生活の軌跡(四川時代―仙界への希求と功名への野望;壮遊時代;長安での宮廷生活―翰林院時代;放浪時代;流罪と晩年)
著者等紹介
金文京[キンブンキョウ]
1952年、東京生まれ。1979年、京都大学大学院文学研究科博士課程修了。京都大学人文科学研究所教授。中国文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たけはる
4
執筆者の先生の語り口調がおもろい。……はそれとして、読めば読むほど李白というひとがわからなくなってくる一冊。いや、この本がわるいんじゃなくて、李白に伝説と詳細不明な人生旅程が多すぎるのです。いつどこで何してたかよくわからん。いや行先はわかるんだけど、何のためにそこ行ったのかとか年代いつとかが不明瞭。そのうえ生前から尾ひれ背びれがくっついて伝説で盛られまくっているので、もうほんとうにエキセントリックな人間です。とりあえず読んでいて思ったのは、→2018/03/06
もち
2
李白について理解が深まるとともに、唐代の異国情緒あふれる感じ、科挙がけして完全に開かれた試験でないことなどが了解され、唐に対する理解も深まった。2016/01/28
佐藤丈宗
0
あとがきより、「李白はわれわれが想像しがちなように、酒を飲んで月と戯れるような仙人のような天才ではなく、勤勉な努力の人であったかもしれないのである。ただ李白が謫仙人としての自分のイメージを演出しようとしたのであれば、読者としては、それに欺かれることは、むしろ本望であろう。しかし欺かれつつも、本当はどうだったかが知りたいと思うのも、読者の心理である」。本書は李白に対して辛辣な評価を下している部分もあるが、それ以上に李白に対する愛に溢れている。時代を超えて愛される詩人の正体に迫る。2017/07/13