内容説明
もしも、この世に『老子』が存在しなかったら、世界の思想史は大きく異なっていたに違いない。その思想は、中国や日本はもとより、いまや「タオ」という国際語によって欧米圏を含む世界中の人々の間で親しまれている。しかし、書物の成立や作者とされる人物は謎に包まれており、また、説かれている内容は実に深遠で多様な解釈が可能である。そうしたことが『老子』の神秘化を招いたゆえに、道教の聖典とされたり、老子とブッダを同一視する考え方が生まれ、仏教受容の一助となったこともあった。二〇世紀に大きく発展した出土資料研究に基づきながら祖本について考え、歴代の注釈読解を踏まえながら、よく知られた句を中心に根源的な思索の道へと踏み込んでいく。
目次
第1部 書物の旅路―中国宗教思想の基軸として(『老子』誕生の謎;『老子』はどのように読まれてきたか?;老子と仏教;老子と道教)
第2部 作品世界を読む―『老子』のことば 「道」(タオ)の教え(「道」から始まる;根源の「道」に帰る;文明への警告;「聖人」の治;足るを知り、しなやかに生きる)
著者等紹介
神塚淑子[カミツカヨシコ]
1953年、兵庫県生まれ。1979年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程中退。文学博士。現在、名古屋大学大学院文学研究科教授。中国哲学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
24
第1部と第2部に分かれていて、1部は老子の思想や人物像を探っています。世界の思想史に与えた影響は大きなものがあっていまだ中国ではかなりの人々に親しまれているようです。2部ではその作品の鑑賞ということでよく知られている個所などが出てきて参考になるとともに老子全体を読んでみたいという気にさせてくれました。2014/10/25
はとむぎ
5
第二部のみ読了。老子に書かれていることが、分かりやすく説明されている本。老子は時代や、読み手が変わると様々に解釈されるとある。古典なるものは器が広く、誤読を許し、更に広がるもの。上善如水を体現した書物。老子は、儒教の教え 孝や仁の押しつけを批判的に見ていた。道に従えば自ずから孝や仁になる。自分の行いを反省させてもらえる素晴らしい本でした。2022/01/02