内容説明
ガリア諸部族を相手に無敵の軍団を率いた武人は、キケローが称賛し、ウェルギリウスの『アエネーイス』に大きな影響を与え、モンテーニュや小林秀雄を唸らせる稀代の文人でもあった。ときに疾風烈火のごとく攻め進む一方、ときに節度と自制、忍耐によって機を待ち、実際の戦闘を最小限に抑える「真の武勇」をそなえた将軍カエサル。ガリアや属州という時空間を舞台に、彼はいかに戦略構想を打ち出し、人を動かし、事を進め、難局を切り拓いていったのか。『ガリア戦記』という作品が体現し、カエサルの偉業を歴史に刻むこととなった言葉の力とは何か。「戦争の大義」「戦争と境界」「戦争と平和」といった普遍的なテーマにも光を当てながら、その醍醐味を読み解く。
目次
第1部 書物の旅路―ガリアへの道、ガリアからの道(文人カエサル;属州統治とガリア;戦争と境界;鬨の声が走る)
第2部 作品世界を読む―戦争を描く(戦争の大義;全ガリアの自由;武勇の真価;劇的叙述)
著者等紹介
高橋宏幸[タカハシヒロユキ]
1956年、千葉県生まれ。1984年、京都大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、京都大学大学院文学研究科教授。西洋古典学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
10
原文自体はどこかで読んだ覚えがあるのですが、この本はそれが書かれた時代背景やカエサルの人となりがよくわかり稀代の文人であったことが示されています。ガリア戦記のエッセンスも簡潔に示されており、もう一度岩波文庫から探し出してきて読んでみようと思ました。2014/02/22
マーブル
6
名文と言われる『ガリア戦記』だが、事実をそのまま記録したとは思えず、自らの戦果を誇張するかのような意図を感じる。カエサルの思惑をローマの慣習、政治的状況、他のローマ人の著作物との比較などを通して考察。 カエサルがこの報告をいかに活用しようと意図し、工夫を凝らし、そして成功したか。その才能を改めて認識することができた。 2019/03/27
はる
6
ざっと読んだ。他のカエサルのガリア遠征の本を読んだことがあり、カエサルのすごさがよくわかる。後半は斜め読み。2017/07/08
すがし
5
はじめて手に取ったが「書物誕生」は、なかなか良シリーズの予感。文体が簡潔なのは言うまでもないにしても歴史的背景についての予備知識無しにはなかなか読みにくい「ガリア戦記」を、当時の政治状況を交えながら丁寧に解説してくれる一冊。記述が客観的で偏りが少なく安心して頼りにできる。2012/12/01
刳森伸一
2
カエサルの『ガリア戦記』に込められた意図を探る。その中で武勇や自由というものが古代ローマでどのような意味があったか、カエサルがそれをどのように利用したかなどが語られる。『ガリア戦記』がいかに考えられて書かれた本かが良く分かり、改めてカエサルの凄さを知った。2015/11/28