内容説明
現世を見すえたゴータマ・ブッダ。彼は実際に何を語ったのか?光を見出しにくい時代にあって、最古の経典が「いま、ここ」に生きる私たちに問いかけているものとは?二五〇〇年の時を超え、仏教という大河の源流へ。
目次
第1部 書物の旅路―最古の経典の誕生と足跡(どのように成立したか;『スッタニパータ』の足跡をたどる―伝承と展開;現代に生きる『スッタニパータ』)
第2部 作品世界を読む―仏教思想の源流(『スッタニパータ』をどう読むか;「ブッダたち」とゴータマ・ブッダ;輪廻に対する態度;無我の提唱;涅槃とは何か;縁起思想の萌芽;差別と平等;ゴータマ・ブッダの生涯)
著者等紹介
並川孝儀[ナミカワタカヨシ]
1947年京都府生まれ。佛教大学大学院文学研究科博士課程満期退学。文学博士。現在、佛教大学文学部教授。専門はインド仏教、特に原始仏教・アビダルマ(部派)仏教(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はちめ
8
スッタニパータ第4章、第5章に記述されている最古層のゴータマ・ブッダの言葉は平易で奇跡を語らないが、このような言葉でどのように同時代を生きた人たちに感動を与えたのだろうか。もちろん完全に解脱した人の語る言葉なので「物事に拘らない」といった普通の言葉でも響が違うということかもしれないが。それとも「生まれによってバラモンになるのではなく、行いによってバラモンになる」という言葉は、当時においては極めて過激で危険な発言だったのだろうか。☆☆☆☆☆2020/01/26
はちめ
7
探していた本に出会った。スッタニパータなどの原始仏教の経典を読んでもどこまでがゴータマ・ブッダの思想で、どこからが後世の脚色なのか判別するのが難しかったが、本書においては第4章と第5章を最古層の内容を伝えているとの分析のもと解釈を進め、その結果大変理解しやすい結論を導いている。その際、第1章から第3章までを最古層に準じる古層と位置づけ比較検討することにより説得力のある内容になっている。輪廻、無我、縁起、平等といった仏教の基本理念について生きたゴータマ・ブッダが何を語ったかが伝わってきます。☆☆☆☆☆2019/11/10
YVI
3
ブッダ本人の主張と言えそうなのは主に中道と判断停止だった。あとはバラモン教に反対する当時の宗教家と同様なことを語っていたに過ぎないが、寛容な立場を取ったので、後の信者たちがその時々の時代背景や地域に合わせて様々に解釈することを許し、多種多様な仏教へと発展していった。2021/02/28
春埜秋岡
2
ブッダの教えが持つ柔軟さ、寛容性が何となく理解できた。すこし気になったこと。本書はスッタニパータが最古層と古層に分かれるという仮説を立てた上で、両者に差異が認められる場合は古層から最古層に遡り、その延長線上に最古層よりも前のゴータマ・ブッダの思想を浮かび上がらせようとしている。この方法には多少疑問の余地があるやに思う。たとえば古層の段階でゴータマ・ブッダの思想への揺れ戻しがあったということは、可能性としては排除できないのではないだろうか。2018/03/24
TTT
1
スッタニパータの成立史を古層と最古層に分け論じる本です。ジャイナ教とバラモン教との緊張関係から捉えた、原始仏教の発生と変遷がわかり面白かったです。2009/07/26