内容説明
当時の日本には真剣に取り組まなければならない問題がいたるところにあったが、その中でも農村の問題は最も重要だった。殊にそこに埋もれて果しない苦渋に満ちた生活を続けている婦人たちに関する事柄こそ、人々に顧みられないが故に一層深刻だったといわなければならない。本書はそれと取り組んでいる。
目次
農家の嫁
古い小説
婦人の労働
気兼ね
衣服
年の暮
若者たち
教育のこと
野良仕事
食事
台所
部屋
子供
明
暗
農村の婦人について(東畑精一)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
to boy
25
1954年発行。信濃の農村で生きる婦人たちを写した写真を思わず食い入るように眺めました。出稼ぎに行っていない男たちに替わり畑や田んぼを作る。蚕の世話、炊事、掃除、洗濯、織物、漬物から醤油や味噌作りなど、それこそ休む間もなく働く彼女たち。農家の嫁にだけは成りたくないと言われた事もなるほどと思わせる暮らし。春、暖かくなると嬉しいはずなのに苦しい畑仕事が始まる季節を喜べないとは何とも悲しい。でも、写真を見ると皆の表情が生き生きとして見えるのは何故だろう。苦しいけれど人生を楽しんでいるように思えた。(続く)2020/12/20
sk
4
50年代の農村の婦人の大変さを追うフォト・ドキュメンタリー。迫って来るものがあった。2019/09/16
がんぞ
4
「農家に嫁に来たがらない」=自分の娘もやりたくない。機械化以前の農作業はとにかく人手がかかる。出産当日まで働くのが「初産で65%、経産婦で90%」、野良仕事をしても家事もしなければならないし、南信濃とて養蚕をする期間は大変な負担(それでも現金収入になるだけ無い地方よりマシ)。子供も労働力で石臼を回したり草取りなどの「軽作業」。代掻きに牛を使う「鼻どり」が「もっとも辛い仕事の一つ」とある。苗取り、田植えも女がやっている。昔、男手は兵役、今は出稼ぎに取られ。小学校教師として赴任して生活を共にしてこそ撮れた記録2016/05/19
キムチ
1
表紙に衝撃を受けて借りた。日本を支えた紡績の本拠の一つ。信濃の農村女性の日常を描いている。ページ数は少ないのに・・かなり濃い内容。贅肉をそげ落とし、モノクロ写真で突きつけている。 描かれた世界は昭和20年末期というのに、「戦前は続いている」。彼女らの戦後は他の地域よりかなり遅れてきたのでは?いや、家族問題を始め、根底では今でもあるのではと・・。 24時間途切れない生活で泥まみれの農作業、「主婦、妻、母としての務め」、自殺、栄養失調、不倫、暴力など上げるに暇ない程の問題が誌面から立ち上がる。