内容説明
前期の自然主義から後期の象徴的リアリズムへ。完成されたパヴェーゼの宇宙。生誕百年、河島英昭個人全訳、成る。
著者等紹介
河島英昭[カワシマヒデアキ]
1933年東京に生まれる。東京外国語大学イタリア語学科卒業。東京外国語大学名誉教授。イタリアの文学経験を日本に根付かせるべく、数多くの作品を翻訳し、批評活動を行なってきた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うぼん
1
二週間前に別翻訳で読んだばかりの「月と篝火」。河島英昭の現地取材や詳細な解説が目的だったが、本編の翻訳もやはり気になって(最初からそうなることはわかっていたけど)結局また全部読んでしまった。拘りの直訳、変な読点位置や主語目的語の倒置につっかえるが、悲哀と緊張が途切れることのない凡そ神懸かり的で美しい小説なので気にしない。河島訳で特筆すべきは時制や自然描写の正確さ。時間で変化する天候や地形の景観描写の何気ない現実感。動植物や農作物の名称も正確な翻訳で、クラシックな言葉で漢字表記されている。文学的でいい感じ。2023/06/22
Adore
0
『月と篝火』 私生児である主人公は下男として仕えることになった主人の元で農業を営み、貧困を抜け出す為に異国を夢見て旅立つ。 その後、アメリカで財を成した彼は故郷に帰ることで、地元で暮らす親友のヌートと久しぶりの再会を果たす。 彼らはノスタルジーに浸りながら懐かしい小径を練り歩き、そして過去の住処に訪れるがそこには足の悪い少年チント(下男)と出会い過去の自分と重ねる。 しかし彼は世界へ出たことにより価値観が変わってしまい、自らの面影を捉えられずにいた。 二作品に共通する一瞬の暴力、彼の最後の小説