出版社内容情報
共生とは、異質なものと対立・緊張をはらんだ豊かな関係性をきずくことです。孤独、ケア、教育、臨床、エコロジーというさまざまなモチーフから共生を考えます。最も現代的なテーマをやわらかい口調で説く倫理学的講義。
内容説明
「共生」とは、異質なものと対立・緊張をはらんだ豊かな関係性をきずくこと。「共生」にはさまざまなモチーフがこめられている。本講義では、孤独、ケア、教育、臨床、エコロジーという問題群から共生を考える。補講では、「人間の権利」を再定義して人権概念の深化を試みる。もっとも現代的なテーマをやわらかい口調で説く倫理学講義。
目次
第1日 「共生」の両義性
第2日 孤独と共生
第3日 ケアと共生
第4日 教育と共生
第5日 臨床と共生
第6日 エコロジーと共生
第7日 「あなたを苦しめているものは何ですか」
補講 人間の権利の再定義―三つの道具を使いこなして
著者等紹介
川本隆史[カワモトタカシ]
1951年生まれ。東京大学大学院教育学研究科教員。専攻:社会倫理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆう。
38
共生とは何かはとても難しい。今日の共生概念が権力から言われるとき、公的責任を伴わない地域での支え合いを強制する共生概念として使われる。それは自己責任を強調する共生概念である。しかし、本著のいう共生は違ったように思う。ケアの相互行為性を重視したり、パターナリズムの否定の重要性が極端な自己決定権(そのための自己責任論)を強調する風潮に対してしっかりと対峙していた。他者の存在をどのように編み込むか、それを抜きにした実践はないのだろう。学ぶべきものが多かったように思った。2018/07/19
柳田
14
院試に向けて(?)再読。ちょっと読みにくいかしら。著者のここまでの研究とか、いわゆる共生論みたいな一般的な話とか登場する思想家の大枠とか知っていたほうがいいかもしれない。情報量多めで、文献紹介も豊富。ひとつのテーマについて一貫して議論するのじゃなく、各テーマについて共生という切り口から議論を紹介する感じなので、まあどうなんだろうか。2018/09/09
里馬
5
嫌いな他者と共に生きる。ということ。どんなに嫌っても他者は居る。隣人ですら他者、家族ですら異質。 それら差異との共存可能性をば。2011/02/17
すずき
2
あくまで入門ということもあり話題の統一感は欠けるものの、共生というざっくりしたテーマについて著者が考える隣接した知が余すところなく紹介されている。竹内敏晴、石原吉郎、ケアの倫理学などが興味深い連関を通して語られる。2017/12/14
rirong
2
はじめ「共生」とみたとき、「共」という文字でか、共同体的なものを思い浮かべた。でも読み進めていくうちに、著者はイデオロギーの枠にはまらない「共生」を追究したいんだと気づいた。著者はロールズの『正義論』を改訂版にして訳している方なので、反照的均衡で、着地点を見つけようと考えてられるんだろうな…。とか思った。これだ!とかいう単純で切れ味のある議論にならないところに難しさはあるけれど、だからこそ魅力的だと思う!こういう考え方は好きだけど、普遍化できるのかな?あ、普遍化する必要はないのかな?2014/01/09