出版社内容情報
ヴァルター・ベンヤミンが一九三六年に発表した「複製技術時代の芸術作品」。その可能性の中心が、三年後の改訂版から大幅に削除されていた。それは、映画観客論でも監督論でもなく、カメラを前にテストされ、演技する「映画俳優」の可能性をめぐるものだった。一九三〇年代の時代状況のただ中に論文を置き直し、読み直す。
【目次】
序
第1章 人民戦線に抵抗するベンヤミン
1 人民戦線、あるいは文化政策の「アウラ」性
2 社会主義リアリズムと民衆出演の映画
3 商品としての言説とベンヤミンの戦術
第2章 テクストとしての複製芸術論文
1 実験としての非アウラ的文体
2 政治的文書としての「複製芸術論文」
3 「アウラの凋落」と「第二の技術」――第一セクションの読解
第3章 複製芸術論文における「映画俳優論」の可能性
1 視覚的無意識と自由な活動領域――第三セクションの読解
2 映画俳優とスポーツ選手の「テスト」可能性――第二セクションの読解(1)
3 アウラなき映画俳優の身振り――第二セクションの読解(2)
補論 一九三九年版における「映画俳優論」の削除
第4章 ラジオ・パーソナリティとしてのベンヤミン
1 ワイマール期のドイツラジオ
2 「青年の時間」の四つのジャンル
3 「物語」を語るベンヤミン
4 口語文化とテクノロジー
5 聴取者参加型劇場としてのラジオ
文 献
解 説――危機の時代に、アウラを爆砕すること……………吉見俊哉
あとがき